【World Topics】オバマケア最大の懸念は医師不足?
公開日時 2014/01/14 03:50
システムの不具合続きにも関わらず、順調に加入者をふやしてきたオンライン保険購入サイト: Health Exchange。オバマケアは無事第一関門突破の見通しだ。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
だが、本当の難題はむしろこの先、最大の懸念は医師不足というのが有識者の共通認識だ。連邦政府機関の調査によれば、現在すでに米国民の約20%は必要十分な数のプラマリケア医がいない地域に住んでおり、16%は歯科医が著しく不足した地域に、30%は精神科医が圧倒的に不足している地域に暮らしている。米国医学会(AAMC)の試算によれば、このまま何の方策もとられなければ、2020年までに、全米で、プライマリケア医は4万5,000人、専門医は4万6,000人も不足する見込みだという。
予防医療に重点を置くオバマケアが必要とするのはプライマリケア医なのだが、実は、プライマリケア医の生涯賃金は専門医に比して低く、高額の教育ローンを抱えた若い医師はプライマリケアになりたがらない,あるいは、なりたくても経済的事情が許さない。そのためプライマリケア医葉、現在でも慢性的に不足しているのだ。
歯科学界にはまた別の事情がある。米国では1980年代に7校、90年代に7校のデンタルスクールが閉鎖された。これにともない、80年代には年間6,300人の歯科医が誕生していたのが、現在では年間4,000人にとどまる。「予防ケアが徹底され、歯科疾患が克服されて」しまったからだという。確かに,アメリカでは虫歯の話はほとんど聞かない。
しかし、実際には「歯科疾患が克服され」たのは、ミドルクラス以上人口についてであって、社会経済的な弱者については、まだ今後の課題である。これまで医療保険がなかったひとは、当然、歯科の予防的ケアも受けてきていないので、当面のニーズはかなり大きい。歯科医不足が懸念される。
医師不足になると新規患者の受け入れができなくなる。つまり、保険はあっても医療が受けられないということだ。オバマケアで新たに保険を得るのは1,000万単位の数のひとびとに対する懸念が高まっているにもうなづける。
医師不足から患者間にアクセス獲得競争がおきれば、当然、条件の悪い患者から排除されてしまう可能性がでてくる。そうなると、まず切り捨てられるのは(支払い率の低い)メディケイドだ。そうした事態になれば、オバマケアが実現したメディケイドの給付拡大は実質的な意味をまったく失ってしまう。
オバマケア、次の課題は、医療サービスの安定供給のための施策である。