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【AHA2013速報】TTM 心停止後自発循環再開患者で低体温療法の目標体温明確化できず

公開日時 2013/11/19 04:00

Niklas Nielsen氏院外で心停止後に自発循環再開(ROSC)した昏睡状態の患者における生存率および神経学的な転帰は、体温を36℃に維持した場合と33℃まで冷却した場合で有意差がみられないことが分かった。低体温療法の目標体温の明確化には至らなかった。心停止後の低体温療法について検討した最大規模の臨床試験「TTM(the Target Temperature Management After Cardiac Arrest)」の結果から示された。今後、低体温療法をめぐり、目標体温や方法、開始時期、患者選択などが議論となりそうだ。米国・ダラスで11月16日から開催されている米国心臓協会年次集会(AHA)で11月17日開かれたセッション「Late Breaking Clinical Trials(LBCT)」で、スウェーデンLund University Helsingborg HospitalのNiklas Nielsen氏が報告した。


院外心停止から蘇生した患者では、脳虚血や再環流による神経障害や、心機能障害不全などの蘇生後症候群が認められる。AHAおよび国際蘇生連絡協議会(ILCOR) のガイドライン(GL)では、こうした患者に対して、体温を速やかに32~34℃に低下させて24時間維持し、ゆっくり復温する“低体温療法”が推奨されている。しかし、最適な目標体温は明確になっていないのが現状だ。


Nielsen氏らは、院外心停止から蘇生した患者を体温が平熱に近い36℃管理群、GLに準じた33℃管理群の2群に無作為に割り付け、有効性と安全性を検討した。


対象患者は、昏睡状態(意識障害分類Glasgow Coma Scale<8)で、心臓が原因と考えられる心停止後に蘇生した18歳以上の成人950例。除外基準は心停止時に目撃者なし、循環再開から240分越え、体温30℃未満とした。2010~13年まで欧州、オーストラリア10カ国36施設で登録された。主要評価項目は生存率。


自発循環再開後240分以内に、血管内カテーテルによるフィードバックコントロールまたは表面冷却装置によって36時間体温管理を行った。体温管理中は、両群ともに鎮静および換気を施した。覚醒しない患者については、72時間後に予後判定を行った。


試験開始時の両群の患者背景は、心室細動など電気ショック療法が効果を示すリズムが33℃管理群79%、36℃管理群81%で、心停止から自発循環再開までの時間はともに25分だった。


死亡は、33℃管理群の50%(235/473例)、36℃管理群の48%(225/466例)で、両群の生存率に有意差は認められなかった(p=0.51)。副次評価項目に設定された180日における死亡および神経学的機能(脳機能カテゴリー(CPC)、modified Rankin Scale(mRS))、重大な有害事象にも有意差は認められなかった。年齢、性別、心停止から自発循環再開までの時間など、事前に規定したいずれのサブグループでも、一貫した結果を示した。


Nielsen氏は、「36℃というより穏やかな体温管理でも、33℃と同様に有益だったが、低体温療法が不要であるということではない。最適な目標体温は、今後さらに検討して行くべきだ」と述べた。


Discussantとして登壇したUniversity of PennsylvaniaのBenjamin S. Abella氏は、Benjamin S. Abella氏33℃を目指した低体温療法の有効性を示した臨床試験として、HACA試験、Bernardらの報告を引き合いに出し、同試験との違いを考察した。HACA試験、Bernardらの報告では、対照群の最高体温が37.6℃、37.3℃と高温で推移していた点で、36℃に体温管理された同試験と異なっていた。その上で、「心停止後のケアと体温管理の目標値については、今後さらに臨床試験で検証していく必要がある」との見解を示した。


そのほか、ショック療法が効果を示す患者の割合が同試験では高率だったことや、心停止後の障害の程度から、2群間で有意差が表れづらかった可能性も指摘。「重症度を判定するマーカーの確立が急がれる」との見解も示した。



◎搬送時から生理食塩水投与の有用性認められず


この日のLBCTでは、心停止後院外で蘇生することができた患者において、4℃の生理食塩水投与による低体温療法を、施設への搬送時から開始することの有用性を検討した臨床試験結果も報告された。しかし、生存率や神経学的転帰の改善には、搬送開始時、搬送後との間で有意差は認められなかった。この原因として、生理食塩水の心臓への圧力が、心臓、脳への血流に悪影響を与えたことも指摘された。

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