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EXAMINE ACS後の2型糖尿病患者に対するアログリプチン 心血管イベント発生リスク上昇みられず

公開日時 2013/09/04 07:30

DPP-4阻害薬・アログリプチンは、急性冠症候群(ACS)の発症から間もなく、心血管リスクの高い2型糖尿病患者において18カ月間心血管リスク上昇がみられないことが分かった。日本人症例が約2割を占め、49カ国の医療機関898施設で実施された無作為化二重盲検比較試験「EXAMINE(Examination of Cardiovascular Outcomes with Alogliptin versus Standard of Care)」の結果から分かった。8月31日からオランダ・アムステルダムで開催されている欧州心臓病学会(ESC)2013の9月2日に開催されたセッション「Hot Line III:Late Breaking Trials on Risk Factors and Diabetes」で、米University of ConnecticutのWilliam White氏が報告した。William White氏


米FDAは新規糖尿病治療薬に対し、心血管イベントを増加させないことを示す臨床試験の実施を義務付けている。同試験は、この要件を満たすために非劣性試験として実施された。同剤の臨床第2相試験、臨床第3相試験では、心血管リスクの上昇は確認されていない。しかし、これらの試験では、心血管リスクが低い症例が組み込まれていたため、ACSを発症したばかりの高リスク2型糖尿病患者においても、心血管リスクが上昇しないことを示すため、同試験の実施に至った。


対象は、血糖降下薬を投与されている2型糖尿病患者で、無作為化の15~90日前に、心筋梗塞(MI)または入院を伴う不安定狭心症を発症し、2型糖尿病と心血管2次予防の標準治療を受けている患者とした。DPP-4阻害薬とGLP-1作動薬を投与されている患者は除外した。


5380例が登録され、標準治療にアログリプチンを上乗せする群(以下、アログリプチン群)2701例、標準治療にプラセボを上乗せする群(以下、プラセボ群)2679例の2群に割り付けた。アログリプチンの投与量は、無作為化時の腎機能に基づき、eGFR≧60mL/min/1.73㎡では25 mg、eGFRが30~60mL/min/1.73㎡が12.5 mg、eGFR<30mL/min/1.73㎡では6.25 mgとした。試験開始後も、腎機能値の変化により調節可能とした。


主要評価項目は、心血管死と非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合イベントとした。主要評価項目でアログリプチンの非劣性が認められた場合、主要心血管イベントにおけるアログリプチンの優位性を検証する目的で、副次評価項目は、主要評価項目に不安定狭心症による緊急血行再建術を追加した複合イベントとした。そのほか、探索的研究として、全心血管死、全死亡についての解析も行った。全ての項目において、非劣性のハザード比(HR)の上限は1.3とした。追跡期間中央値は18カ月で最長40カ月だった。


患者背景は、年齢中央値が61歳、男性が68%、白人が73%を占めていた。アジア人は20%だった。糖尿病の罹患期間はアログリプチン群が7.1年、プラセボ群7.3年、平均HbA1cは2群とも8.0%、無作為化前に発生したACSはMIが2群とも77%、入院を必要とする不安定狭心症が2群とも23%、ACSからの日数(中央値)はアログリプチン群44日、プラセボ群46日だった。併用薬剤は、抗血小板薬がアログリプチン群97%、プラセボ群97%、β遮断薬は82%、82%、スタチンは91%、90%だった。血糖降下薬の投与は、メトホルミンがアログリプチン群65%、プラセボ群67%、スルホニル尿素(SU)剤は47%、46%、チアゾリジン誘導体は3%、2%、インスリンは29%、30%だった。


主要評価項目の発生率は、アログリプチン群11.3%(305例)、プラセボ群11.8%(316例)で、HRが0.96となり、非劣性のマージンを満たした(99%CI≤1.16、非劣性p<0.001、優位性p=0.32)。各評価項目では、心血管死がアログリプチン群3.3%(89例)、プラセボ群4.1%(111例)(HR:0.79、95% CI: 0.60 – 1.04、p=0.10)、非致死性心筋梗塞はアログリプチン群6.9%(187例)、プラセボ群6.5%(173例)(HR:1.08、95% CI: 0.88 – 1.33、p=0.47)、非致死性脳卒中はアログリプチン群1.1%(29例)、プラセボ群1.2%(32例)(HR:0.91、95% CI: 0.55 – 1.50、p=0.71)だった。なお、HbA1c値は、試験終了時点でアログリプチン群がプラセボ群より0.36%有意に低下していた(p<0.001)。


副次評価項目(心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+不安定狭心症による緊急血行再建術の施行)も、アログリプチン群12.7%、プラセボ群13.4%で、2群間に差はみられなかった(HR:0.95、p=0.26)。全心血管死(アログリプチン群:4.1%、プラセボ群:4.9%、HR:0.85、p=0.21)と全死亡(アログリプチン群:5.7%、プラセボ群:6.5%、HR:0.88、p=0.23)においても、2群間に差はみられなかった。


有害事象の発生率は、高血糖症がアログリプチン群6.7%(181例)、プラセボ群6.5%(173例)、急性膵炎が0.4%(12例)、0.3%(8例)、慢性膵炎は0.2%(5例)、0.1%(4例)、悪性腫瘍が2.0%(55例)、プラセボ群1.9%(51例)で有意差はみられなかった(p=0.74、050、1.00)。なお、すい臓がんの発生は両群ともにみられなかった。
White氏は、ACS発症から間もない2型糖尿病患者にアログリプチンの追加投与することによる、主要心血管イベントの発生率の増加はみられなかったとした。


同発表を論評した米・Harvard Medical SchoolのEugene Braunwald氏は、アログリプチンはプラセボと比べ、主要血管イベント率を上昇させないとする、あらかじめ設定した評価項目を明確に達成できたとした。さらに、アログリプチン投与と、懸念されていた急性および慢性膵炎のリスク増加と関連しないことがわかったことは、大きな朗報であると評価した。Eugene Braunwald氏


これまで、DDP-4阻害薬の心臓保護作用を示した大規模基礎研究や、糖尿病患者においてDDP-4阻害薬が糖尿病患者の心血管有害事象を著しく低下したメタ解析のデータなどが報告されてきた。しかし、今回の試験では同様の結果を得ることはなく、残念ながらアログリプチンには、死亡や心筋梗塞、脳卒中のリスク低下における有効性は示されなかったと指摘した。


さらに、心血管の重要な評価項目である心不全による入院や、微小血管活性化への有効性の可能性、微小アルブミン尿低下への有効性などを挙げ、これらが検討する必要性を指摘した。
また、アログリプチン群とプラセボ群で、プラセボに追加された併用薬を調べれば、興味深い結果が得られる可能性があると指摘。安価なジェネリック薬が併用薬であるならば、アログリプチンとの費用対効果分析を実施するのが適切であろうとの見解を示した。
 


 

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