TWICE チカグレロルで服薬忘れの影響少なく血小板抑制作用維持
公開日時 2012/09/06 05:00
抗血小板薬の服薬アドヒアランスを追跡したデータベースから、血小板凝集抑制作用(IPA)の軌跡をシュミレーションした結果、クロピドグレルに比べ、チカグレロルは単回での服薬忘れは多かったものの、有意に高い平均IPAレベルを維持することが分かった。8月25~29日の日程で、ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州心臓病学会(ESC)2012のポスターセッションで、スイス・AARDEXグループのBernard Vrijens氏らの研究グループが26日、発表した。
標準的な抗血小板療法として、アスピリンとチエノピリジン系薬剤(P2Y12受容体拮抗薬)の併用が行われている。チエノピリジン系薬剤として汎用されているクロピドグレルは、維持用量として75mg1日1回投与を投与するのが標準とされている。一方、チカグレロルは、血漿中半減期が約7~8.5時間で、P2Y12受容体に可逆的に直接結合するため、180mg1日2回投与が標準用量とされている。
1日2回投与の薬剤は、患者のアドヒアランス低下が懸念されている。そのため、Vrijens氏らは、薬物動態的、薬力学的な点だけでなく、服薬アドヒアランスも加味した上で、薬剤の優越性を検討することの重要性を強調。患者の服薬アドヒアランスデータを基に、チカグレロルとクロピドグレルの予測IPA値を比較検討した。
対象は、心血管疾患治療薬を処方された患者の処方歴と、服薬記録を管理する国際データベースから服薬アドヒアランスのデータを抽出できた患者のうち、2剤のいずれかを服薬している1200例。患者に薬を取り出すたびにカウントされる特別なデバイスを提供することで、服薬アドヒアランスを追跡した。
投与開始から30日間の服薬アドヒアランスの記録から、各患者のIPA値の軌跡を予測。さらに、アスピリンによるIPA値への影響を1時間ごとに加味し、IPA値の軌跡のスロープを調整した。最終的に、1人の患者における30日間の平均IPA値と最低IPA値をシミュレーションした後、薬剤ごとの平均と最低IPA値を計算した。なお、投与開始0日目にloading (チカグレロル:180mg、クロピドグレル:600mg)の投与を行っている。
その結果、30日間で最低1回以上服薬し忘れた割合は、チカグレロル群は75.2%で、クロピドグレル群の46.8%を上回った。しかしチカグレロル群で連続して2回服薬し忘れた割合は25.7%に留まった。
また、チカグレロルを1回服薬し忘れた時のIPA値は、完全に服薬したクロピドグレルの患者におけるIPA値の24時間トラフ値を下回ることはなく、チカグレロルを1日(2回連続)服薬忘れた場合と、クロピドグレルを1日服薬し忘れた場合のIPA値は同等であった。
平均IPA値は、クロピドグレル群の55%に対し、チカグレロル群は81%で、チカグレロル群が有意に高かった(p<0.001)。また平均最低IPA値においてもクロピドグレル群の37%に対し、チカグレロル群は53%と有意に高い値を示した(p<0.001)。
これらの結果から研究グループは、「単回の服薬忘れの頻度はクロピドグレルを服薬する患者よりチカグレロルの患者の方が高かったが、血小板凝集抑制の度合いは、チカグレロルの患者でより高値に維持されている」とした。この理由として、研究グループは、ベースラインで到達しているIPA値がクロピドグレルと比べてチカグレロルの方がより高いことと、2回連続でチカグレロルを服薬し忘れる割合が低いことを挙げている。