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【AHA】ARCTIC DES留置前後の抗血小板療法の個別化療法転帰向上につながらず

公開日時 2013/01/08 05:00

薬剤溶出ステント(DES)を留置する患者において、留置の前後で血小板反応性にもとづき抗血小板療法を調節する治療戦略は、標準治療と比較して臨床転帰を改善させないことが、臨床第3相ランダム化試験「ARCTIC(Assessment by a double Randomization of a Conventional antiplatelet strategy versus a monitoring-guided strategy for drug-eluting stent implantation and, of Treatment Interruption versus Continuation one year after stenting)」の結果から分かった。

 

 

抗血小板療法中の血小板反応性は、冠動脈ステント留置患者の重要な予後予測因子であることが指摘されてきた。


血小板凝集機能の強力な抑制は、虚血性イベントを低下が期待できる一方で、出血リスクがつきまとう。また経皮的冠動脈インターベンション(PCI)から24時間後の血小板反応性検査で高反応性だった症例に、クロピドグレル2倍用量の有用性を検討したGRAVITASの結果から、2倍用量と通常用量とで6カ月後のイベント発生率に差はみられていない。


試験では、DES留置前の血管造影検査時と留置後に血小板反応性のモニタリングを行い、抗血小板薬と用量も最適化することで、長期的な臨床転帰が改善するか検討した。


DESを留置する予定の患者2440例を対象に、血小板反応性から、抗血小板療法を個別化する群(モニタリング群)1213例、標準治療群1227例の2群にランダムに割り付けた。登録期間は、2009年1月~11年1月までの2年間。


モニタリング群では、まず血管造影検査時に、VerifyNowで血小板凝集機能を測定し、アスピリン低反応性(poor responder)だった(ARU≥550と定義)患者に、アスピリン500mgを静注。クロピドグレル低反応性だった患者(PRU≥235または抑制率15%以下と定義)には、GPIIb/IIIa阻害薬とクロピドグレル(≥600mg)かプラスグレル(60mg)を追加投与してからDESを留置した。


留置後は維持療法として、クロピドグレル150mg/日またはプラスグレル10mg/日を投与し、14〜30日後に再度VerifyNowによる検査を行い、そこでアスピリン低反応性患者には、2倍の維持用量を投与し、クロピドグレル低反応性だった患者では同剤を75mg以上に増量するかプラスグレル10mgに切り替えることとした。一方で、抑制率が90%を上回る被験者では、クロピドグレルの用量を75mgに減量し、プラスグレルを投与されていた患者はクロピドグレル75mgに切り替えた。標準治療群では、血小板機能検査は行わず、ステント留置後の抗血小板療法は現行のガイドラインに基づき、担当医の判断に委ねられた。主要評価項目は、12カ月後の全死亡+心筋梗塞(MI)+脳卒中+ステント血栓症+緊急血行再建術の複合エンドポイントとした。


平均年齢63歳、糖尿病は標準治療群37%、モニタリング群36%、MI既往は標準治療群31%、モニタリング群29%、PCI既往は標準治療群44%、モニタリング群42%、β遮断薬使用は標準治療群60%、モニタリング群56%、PPI使用は標準治療群32%、モニタリング群33%と、ベースラインの患者背景に差はみられなかった。


血管造影時の血小板検査で、アスピリン低反応性は7.6%で、このうち、その場でアスピリンの静注を受けたのは85%だった。クロピドグレル低反応性は34.5%で、このうちクロピドグレルの増量が80%、プラスグレルが3.3%、GPIIb/IIIa阻害薬は80%だった。


DES留置後14日目での血小板検査では、アスピリン低反応性が3.9%で、このうち46%はアスピリンを増量した。クロピドグレル低反応性は15.6%で、このうち43%がクロピドグレルを増量し、17%がプラスグレルに切り替えた。


主要評価項目の発生率はモニタリング群34.6%、標準治療群31.1%で、両群間に有意差はみられなかった(ハザード比(HR):1.13、95% CI:0.98-1.29、p=0.096)。副次評価項目のステント血栓症+緊急血行再建術の施行も、モニタリング群4.9%、標準治療群4.6%で、有意な群間差はみられなかった(HR:1.06、95% CI:0.74-1.52、p=0.77)。また、各評価項目についても両群間に差はみられなかった(表参照)。

 

 


一方、大出血はモニタリング群で2.3%、標準治療群で3.3%、軽度の出血はモニタリング群で1.0%、標準治療群では1.7%で、どちらも有意な差はみられなかった。


結果を報告した、フランスPitié-Salêtrière University HospitalのGilles Montalescot氏はこれらの結果から、「ステント留置の前後で、血小板反応性に基づき抗血小板療法を調節する治療戦略は、標準治療と比較して臨床転帰を改善させなかった」とし、「血小板機能検査の日常臨床で用いることは支持されない」と結論付けた。


なお、同試験はARCTIC-2として継続しており、最初のランダム化から1年後に2回目のランダム化を行い、クロピドグレルの継続と中止による影響を比較検討する。また高齢患者の出血イベントにおける血小板機能検査の意義を評価する、ANTARCTIC試験も進行中であることを付け加えた。

 



米・Bates氏「個別化は臨床的ベネフィットがない」 血小板反応性リスクマーカーの可能性も示唆


Discuassantとして登壇したした米University of MichiganのEric Bates氏は、低反応性の患者を血小板機能検査で絞り込み、それに基づいて抗血小板薬の用量調節が、標準治療に比べ転帰が良好との仮説に基づいて実施された同試験を高く評価した。


特に、「モニタリング群での抗血小板療法の用量調節はかなり強力で、血小板凝集抑制を個別化、最大化させようとした」と強調した。その上で、主要評価項目だけでなく、各評価項目に差がみられなかったことから、「抗血小板療法の個別化は標準治療と比べ、臨床的転帰を向上させないと認めざるをえない」と述べた。


さらに過去に報告された臨床試験結果を踏まえて、総合的に考察すると、「抗血小板療法の個別化には臨床的ベネフィットがないというのが一貫したメッセージであろう」と指摘した。


クロピドグレル低反応性は、虚血性リスクの予測因子とはなるものの、「抗血小板療法の適切な選択で血小板凝集機能を最適化しても、臨床転帰の向上にはつながらない」とした。また「患者個人レベルでは、血小板凝集機能検査の感度や特異度が、抗血小板療法を個別化出来るほど十分ではない可能性がある」と指摘。「血小板反応性は修正可能な危険因子ではなく、リスクマーカーの可能性がある」との見方も示した。

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