米国発 医療データもクラウドの時代
公開日時 2013/04/26 05:00
近年、医療機関はどこもジレンマに陥っている。画像データを中心に、医療データは時々刻々増加するのに、コスト削減の圧力から、従来のストレージにデータを保存するためのハードやソフトの費用を十分に捻出できないからだ。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
たとえばデトロイトのHenry Ford Health Systemsの循環器科は,毎年25000枚以上蓄積される画像データの保管に既存システムのアップグレードが追いつかず、ついに2011年からクラウド・ストレージの利用を開始した。
米国の医療機関では、毎年、CTスキャン、レントゲン、MRI、超音波画像を合わせて年間合計およそ6億枚の画像が撮影されている。これらのデータの法定保存期間は、米国の場合には7年であるが、実際には7年以上保存されるのが通例である。しかも保存されるのは、当然ながらオリジナルの1枚だけではない。万一に備えてバックアップがとられ、また情報開示にそなえて別枠での保存がなされるなど、複数のコピーがとられているのが常識だ。AT&T社の医療データ担当部局によれば、米国の医療データは年々40%ずつ増加しているという。
クラウド・サービス業者は「ストレージだけでなく、医師の診断支援から、患者への情報開示まで、クラウドがオンラインで便利に安く提供できるサービスはたくさんあります」と自信を持って語る。しかし、クラウド・サービスには、個人情報保護とセキュリティの観点からは、なお不安が残ると言うのが専門家の見解なのである。そのため多くの医療機関は今日でもストレージに多大な予算を割いているのだが、加速度的に増加する画像データの処理は困難の度合いを増しており、さらに一方には,昨今の医療コスト削減のプレッシャーが重なり、悩みを深めている。