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大統領選挙と医療改革法

公開日時 2012/11/07 04:00

候補者テレビ討論会では大きな争点とならなかった印象のある医療改革。だが、「ヘルスケア」は共和党と民主党のイデオロギー的対立がもっとも際立っている問題であり、選挙結果がすぐに、直接に国民生活に大きな影響を与える政策領域である。(医療ジャーナリスト 西村由美子)


オバマ大統領は2010年、議会における民主党の圧倒的優位を基盤に強行採決により医療改革法を成立させた。2019年までに3200万人以上の無保険者を保険購入可能にすると謳う医療改革法は、成立直後にフロリダ州知事を筆頭とする州知事グループによって違憲審査を提訴されたが、ほぼ全面的な合憲判決を勝ち取った。


オバマ政権は医療改革法成立直後から法案の段階的な施行を開始。すでに施行され国民の支持を得ている施策には、たとえば(1)26歳までの若者は親の医療保険に加入できる(従来は21歳未満までであった)、(2)既往症のある未成年(18歳未満)の保険加入拒否の禁止、(3)メディケアの医薬品保険のカバー拡大などがある。


わかりやすいところでは、インフルエンザの予防接種に保険の有無がいっさい問われなくなり、保健所や開業医のクリニックはもとより、ウォルマートのような量販店の店頭で、だれでも気軽に気にツ料金で接種してもらえるようになった。高齢者、学生、子ども、低所得層等は無料である。オバマ政権はこうした国民一人一人にじかに訴求するアウトリーチ型の政策に長けており、選挙キャンペーンでは、そうした政策の意義をミシェル夫人が「母親の立場」でさりげなく語り、支持を高めている。


総体的に見て、医療改革の議論では、すでに具体的な改革策を開始しているオバマが有利であるとの印象だ。なにしろアメリカ医療の最悪のホラー・ストーリーである無保険者問題に正面から切り込む法案をすでに成立させているからだ。


さて、改革法の全面施行は2014年である。オバマが再選されれば、2014年からは(1)米国に居住する者はごく一部の例外を除き医療保険を購入する義務を負う(購入しない場合はペナルティを支払う義務を負う)、(2)メディケイドの適用範囲が大幅に拡大され、(3)零細企業および個人自営業者に購入可能な医療保険を提供する「Exchange」と呼ばれる購買プラットフォームの提供が州に義務づけられる、ことになっている。


オバマの医療改革法は州政府の負担がきわめて重い。規制は連邦政府だが、実際の施行は大半が州政府の責任とされているからだ。州知事グループによる最高裁への違憲提訴の背景には、イデオロギー的な対立もあるが、実際には,ほとんどの州が追わされる財政的な負担に耐えきれないであろうとの現実的な憂慮でもあった。


ロムニー候補は「当選の暁にはまっさきに医療改革法を廃案に追い込む」と一貫して主張しているが、実際には、オバマ反対の論点は必ずしも一貫しない。テレビ討論でも「既往症による保険加入拒否問題はどう解決するのか?」と問われれば、「(オバマによって)その問題は解決されたではないか。すでに実施された改革はそのまま維持するから問題ない」と述べている。ロムニー候補の医療改革案は、共和党陣営が長く主張してきた政策路線を踏襲するもので、多くは国民の自助努力への支援策と言うべき政策、たとえばヘルス・セイビング・アカウントの奨励、医療過誤裁判の慰謝料への上限規制、医療保険に対する税額控除などである。                

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