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【AHA特集】TRILOGY ACSサブ解析 血小板反応性モニタリングの意義に疑問符 虚血性イベントとの独立した関連みられず

公開日時 2012/11/06 06:00

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)/冠動脈バイパス術(CABG)を行わずに薬物療法だけで管理されている急性冠症候群(ACS)患者において、血小板反応性の高さと、虚血性イベントと独立した有意な関連性がみられないことが分かった。一般的に、クロピドグレルは効果発現に個人差があるとされているが、血小板反応性が高い患者(HPR)では、クロピドグレルの反応性が低いことが知られており、これらの患者では新規抗血小板薬・プラスグレルの効果発現が期待されていた。プラスグレルの臨床第3相試験「TRILOGY ACS(Targeted Platelet Inhibition to Clarify the Optimal Strategy to Medically Manage Acute Coronary Syndromes)」のサブ解析の結果から分かった。11月3~7日の日程で米国・ロサンゼルスで開催されている米国心臓協会年次学術集会2012(AHA2012)で、11月4日に開かれた「Late-breaking Clinical Trials:Practice Implications for CAD and VTE」で、Duke Clinical Research InstituteのPaul A.Gurbel 氏が報告した。(11月4日 米国・ロサンゼルス 望月英梨)


安定狭心症、陳旧性心筋梗塞など病態が安定した患者におけるPCI留置時の虚血性イベント発生とHPRとの関連性がこれまでに指摘されている。一方で、血行再建術(PCI/CABG)を施行せずに、薬物療法だけで管理されている急性冠症候群(ACS)患者を対象に、血小板機能と臨床成績との関連性を大規模臨床試験で検討されていなかった。


試験は、薬物療法のみで管理された、不安定狭心症(UA)または非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)患者を対象に、アスピリン(100mg/日未満)をベースに、プラスグレル(10mg/日、または5mg/日)、またはクロピドグレル75mg/日を上乗せして治療効果を検討した。なお、75歳以上の患者と、75歳未満で体重が60kg未満の患者では、プラスグレル5mg/日を投与することとしている。


今回報告されたサブ解析は、クロピドグレルまたはプラスグレルを投与されたACS患者の血小板反応性と臨床成績との関連性を検討することで、両剤の特性を検討することを目的に実施された。なお、すでに報告された、本解析では、主要評価項目の心血管死+心筋梗塞+脳卒中の発生率について、クロピドグレル群とプラスグレル群の間に、有意差がみられなかったことが報告されている(ハザード比(HR):0.91、95%CI:0.79-1.05、p=0.21)。


解析対象は、本試験に登録された患者のうち、血小板反応性を測定したプラスグレル群1286例、クロピドグレル群1278例(全体の27.5%)で、25カ国から登録された。血小板反応性は、VerifyNowP2Y12アッセイを用いて血小板凝集率(PRU)を測定し、PRU>208を血小板高反応性と定義付けた。


患者背景は、75歳以上がプラスグレル群で19.0%、クロピドグレル群で21.2%、体重60kg未満はプラスグレル群で15.5%、クロピドグレル群で15.6%、UAはプラスグレル群で33.4%、クロピドグレル群で32.4%だった。


75歳未満体重60kg以上(プラスグレル10mg/日投与)を対象にPRUを比較すると、投与開始2時間後からプラスグレル群はクロピドグレル群に比べ、有意に低下し(p<0.001)、この傾向は30カ月後まで継続した(p<0.001)。投与開始1カ月時点のPRU(中央値)は、クロピドグレル群の200(IQR:144―260)に対し、プラスグレル群は64(IQR:33-128)で、有意に低下していた(p<0.001)。プラスグレル10mg群は64(IQR:33-128)だったのに対し、5mg群のうち、75歳未満体重60kg未満では139(IQR:86-203)、75歳以上では164(IQR:105-216)で、いずれも10mg群よりも有意に低値となった(p<0.001)。



◎単変量ではHPRとイベント発生との関連性も 


30カ月後の主要評価項目の発生率は、クロピドグレル群では17.2%(160イベント)、プラスグレル群では18.9%(180イベント)で、本解析同様に有意差はみられなかった(p=0.29)。


イベント発生の有無に分け(発生:214例、無発生:1794例)、投与開始30日時点に測定したPRUの影響について、連続度数分布を用いて検討した結果、両群間に大きな差はみられなかった(p=0.07)。


一方で、Kaplan-Meier法を用いて、HPRとイベント発生との関連を検討したところ、主要評価項目の発生率は、HPR群では18.8%、non-HPR(血小板反応性が高くない)群では13.8%で、HPRで有意に発生率が高い結果となった(p=0.017)。全ての心筋梗塞はHPR群で11.2%、non-HPR群で7.8%、全死亡はHPR群で11.5%、non-HPR群では8.8%で、いずれもHPR群で高い傾向はみられたが、有意差はみられなかった(p=0.081、0.114)。


HPRのカットオフ値も明確となっておらず、どの値が最適か議論となっているが、ROC曲線で検討した結果、HPR>178であることも示された(感度:47%、特異性:59%)。


PRUと主要評価項目発生との関連性は、時間依存性共変量を考慮したPRU値は調整HRが1.03(95%CI:0.96-1.11)、30日時点のHPR(PRU>208)が1.16(0.89-1.52)、30日時点のHPR(PRU>178)が1.13(0.87-1.45)で、いずれも有意な因子とはならなかった(p=0.44、0.28、0.35)。これは、全死亡、全心筋梗塞で同様の結果となった。


Gurbel氏は、データ欠損などでバイアスの可能性があることや、本解析では投与開始12カ月以降に両群間に差がみられていることなど試験の限界を説明。その上で、「プラスグレルとクロピドグレルの治療を受けている患者を対象に血小板反応性を最も長期間評価した試験」と試験の意義を強調した。


その上で、試験結果について、プラスグレルは、血小板反応性が一貫して低いことが示されたものの、「PRU値とHPRと虚血性イベントとの関連は単変量ではみられたものの、独立したものではない」と指摘し、TRILOGY ACSと比較できる大規模な臨床試験が今後実施されることに期待感を示した。


なお、同試験の結果は同日付の医学誌「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に掲載された。
 

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