【ASCO特別版】TML 転移性大腸がんの二次治療としてのベバシズマブ継続投与OS有意に延長示す
公開日時 2012/06/11 06:55
転移性大腸がんの一次療法として、ベバシズマブ+化学療法の併用をおこなったにもかかわらず、進行がみられた患者に、ベバシズマブを継続して投与した上で化学療法を行うことで、全生存期間(OS)が延長することが分かった。ベバシズマブの前向き無作為化臨床第3相試験TML(ML18147)で示された。6月1~5日まで米国・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)で、The Hubertus Wald Tumor CenterのDirk Arnold氏が、3日午前に開かれたOral Abstract Sessionで発表した。
ベバシズマブとフオロピリミジンベースの化学療法の併用は、転移性大腸がん(mCRC)の一次治療、ベバシズマブ未治療患者の二次治療の標準療法となっている。米国の実臨床では、ベバシズマブを含む一次治療で進行(PD)がみられた患者に対し、二次治療としてベバシズマブを含む治療が行われるケースも少なくない。一方で、同剤の継続投与による、VEGFを継続的に阻害することの有効性については、これまで▽前臨床でのVEGFの持続的阻害による腫瘍退縮維持▽非無作為化観察研究での生存期間延長――が示されているにとどまっており、二次治療として継続投与した際の有効性を示すエビデンスは構築されていなかった。
試験では、一次治療として、ベバシズマブとフオロピリミジンベースの化学療法の併用を行い、PDとなった症例を対象に、二次治療としてベバシズマブと化学療法の併用を継続した際の有効性と安全性を検討した。症例は、ML18147試験またはAIO試験で登録され、一次治療は、ベバシズマブ+標準化学療法(オキザリプラチン[L-OHP]ベースまたはイリノテカン[CPT-11]ベース)を行った。二次治療でのCTは、一次治療でL-OHPベースのレジメンを用いた患者はCPT-11ベース、一次治療でCPT-11ベースのレジメンを用いた患者はL-OHPベースとした。登録期間は2006年2月~10年6月まで。主要評価項目はOS 。
登録基準は、▽ECOG PS 0-2▽試験での治療開始がPDから4週以内▽ベバシズマブ+標準化学療法による一次治療を受け、転移巣切除術候補ではない――ことなどを満たす、18歳以上で組織学的に確定診断されたmCRC820例。▽最後のBEV投与から3カ月以上経過▽一次治療のPFSが3カ月未満▽一次治療でのBEV投与期間が3カ月未満――などは、除外した。
患者背景は、化学療法群(411例)とベバシズマブ+化学療法群(409例)との間に有意差はみられなかった。
◎有害事象の発現は大きな差みられず
その結果、OS(中央値)は化学療法群9.8カ月に対し、ベバシズマブ+化学療法群では11.2カ月で、有意にベバシズマブ+化学療法群で延長する結果となった(ハザード比(HR):0.81(95%信頼区間[CI]: 0.69-0.94、p=0.0062)。
PFS(中央値)も化学療法群4.1カ月に対し、ベバシズマブ+化学療法では5.7カ月で、ベバシズマブ+化学療法群で有意な延長がみられた(HR:0.68(95%CI: 0.59-0.78、p<0.0001)。
これらの結果は、サブグループでも、同様に一貫した結果を示した。
奏効率は、両群ともに同等だった(化学療法群16例3.9%、ベバシズマブ+化学療法群:22例5.4%)が、SD(不変)が化学療法群の50%に対し、ベバシズマブ+化学療法では63%だった。疾患コントロール率は、化学療法群の54%と比較して、ベバシズマブ+化学療法群で68%と有意に高かった(p<0.0001)。
有害事象は、ベバシズマブ+化学療法群でわずかに出血が多かったが、グレード3~5の重度の副作用は両群で差がなかった。
結果を報告したArnord氏は、「明らかにpositiveな試験だ」と有効性を強調。ベバシズマブを継続投与することで、「持続的なVEGF阻害が臨床的に有益で、OS、PFSの有意な延長をもたらすことが確認された」とした上で、「治療期間が延びても、ベバシズマブ関連の有害事象が増えなかったことも重要で、この治療法は、大腸がん二次治療の新たな選択肢になるだろう」との見解を示した。その上で、VEGFを持続的に阻害する治療戦略について、他のがん腫でも有効性の検討が始まっていることも紹介した。