【日本造血細胞移植学会総会】L-AMBで真菌症をコントロールしながら造血幹細胞移植を施行
公開日時 2012/04/03 13:40
侵襲性真菌感染症を合併した小児血液腫瘍性疾患患者
第34回日本造血細胞移植学会総会
2012年2月24~25日 大阪国際会議場
札幌北楡病院小児科の小林良二氏は、2月24~25日に開催された第34回日本造血細胞移植学会総会(大阪国際会議場)の一般口演で、侵襲性真菌感染症(IFI)を合併した小児血液腫瘍性疾患患者に、抗真菌薬・アムホテリシンBリポソーム製剤(製品名:アムビゾーム、以下、L-AMB)を投与し、IFIをコントロールしながら造血幹細胞移植(SCT)を施行した症例を報告した。
小児血液腫瘍性疾患では化学療法の進歩により生存率が向上しているが、抗がん剤治療の強化で感染症、なかでも重篤度の高いIFIが増加傾向にあり、重症化している。化学療法中に真菌感染症を合併した場合には、強力な治療が継続できなくなり、その結果、再発したり、また、造血幹細胞移植の施行も不可能になるといった問題がある。
L-AMBを投与した2症例
小林氏は抗真菌薬を投与して難治性真菌症をコントロールし、SCTを施行した7症例を報告した。
L-AMBを投与した4例のうち1例は生着不全例であり、1例は副作用(疼痛)のため52日目に投与中止した。他の2例を紹介する。1例目は急性リンパ性白血病(ALL)の6歳男児の症例。寛解導入療法により、寛解(CR)に達したが、治療中に再発した。その後、治療を行ったが寛解には至らず、侵襲性肺アスペルギルス症を疑いL-AMB2.5mg/kgの投与を開始した。真菌症をコントロールしながら、非寛解期に兄弟間の骨髄移植を実施し、寛解に達した。肺アスペルギルス症は、画像所見から良好な改善が確認でき、治療期間中腎機能の悪化もなかった。
2例目はALLの13歳女児の症例(図)。寛解導入療法中に抗菌薬不応の発熱があり、その後骨髄が回復し寛解に至ったが、カンジタ性肝膿瘍を発症した。このため、化学療法を実施し、L-AMBの用量を調節しながら投与を継続し、寛解中に骨髄非破壊的移植(RIST)により臍帯血移植(CBT)を実施し、成功した。
L-AMBは2.5mg/kgで投与を開始。改善が不十分なため投与開始1カ月後に3.75mg/kgに増量した。その後、移植前処置で抗悪性腫瘍剤メルファランを投与するため、L-AMBを2.5mg/kgに減量したが、移植後に血清クレアチニン(Cr)が0.5~1.0mg/dlから1.0~1.5mg/dlに上昇し腎機能が悪化したため、さらにL-AMBを1.25mg/kgに減量した。その後、腎機能が改善したためL-AMBを2.5mg/kgに再び増量したが、腎機能の悪化は見られなかった。移植後20日後にはカンジダ性肝膿瘍は消失し、L-AMB投与は有効と考えられた。
小林氏は「L-AMBの2.5mg/kgで治療して真菌症が改善しなかったり、腎機能が悪化すると、他剤に変更したり、併用することが多い。しかし、我々はL-AMBの投与量を調節して粘り強く投与して、有効な症例が得られている」と話す。