【ACC.12特別版】EINSTEIN PE リバーロキサバン 急性症候性肺塞栓症患者のVTE発症抑制で非劣性示す
公開日時 2012/03/28 10:31
第Xa因子阻害剤・リバーロキサバンの急性症候性肺塞栓症(PE)患者の静脈血栓塞栓症(VTE)発症抑制効果を検討した結果、エノキサパリンとワルファリンを用いた標準療法に非劣性を示したことが、同剤の国際臨床第3相試験「EINSTEIN-PE」の結果から分かった。3月24~27日の日程で米国・シカゴで開催されている第61回米国心臓病学会議(ACC.12)で、26日に開かれた「Joint American College of Cardiology/New England Journal of Medicine Late-Breaking Clinical Trials」セッションで、EINSTEIN Invetigatorsを代表して、Harry R Buller氏が報告した。(米国・シカゴ発 望月英梨)
試験は、静脈血栓塞栓症患者の治療をめぐり、リバーロキサバンの有効性・安全性を検討する3本の臨床第3相試験を含む“EINSTEIN”プログラムの一環として実施された。すでに報告された、急性症候性深部静脈血栓症(DVT)の治療として同剤の有効性・安全性を検討した“EINSTEIN‐DVT”、二次予防としての有効性・安全性を検討した“EINSTEIN-Extension”が行われている。
EINSTEIN-PEは、症候性DVTの有無にかかわらず、急性症候性肺塞栓症(PE)患者を対象に、リバーロキサバン単剤のエノキサパリンを用いた現在の標準療法への非劣性を示す目的で実施された。オープンラベル、ランダム化試験で、88のイベントが発生した時点で解析するとした。
PE患者4833例を①リバーロキサバン群(1~21日15mg1日2回投与に続き、20mg1日1回投与)2419例、②標準療法群(エノキサパリン1日2回5日間皮下注射+ビタミンK拮抗薬[ワルファリン、目標INR値:2.5(2.0~3.0)])2413例――に分け、治療効果を比較した。主要評価項目(有効性)は、最初のVTE(静脈血栓塞栓症)の再発。主要な安全性の評価項目は、最初の大出血+臨床上重大な出血とした。
その結果、主要評価項目の発生率は、標準療法群の1.8%(44例)に対し、リバーロキサバン群は2.1%(50例)で、ハザード比は1.12で、事前に設定されていたマージン(1.68)を下回り、非劣性を示した(非劣性p<0.0026)。ただし、優越性を示すには至らなかった(優越性:HR<0.75)。なお、INR至適範囲内時間(TTR)は、62.7%だった。
一方、主要な安全性評価項目(大出血+臨床上重大な出血)の発生率は、標準療法群の11.4%(274例/2405例)に対し、リバーロキサバン群では10.3%(249例/2412例)で、リバーロキサバン群で低い傾向がみられた(HR:0.90、[95%CI:0.76-1.07]、p=0.23)。大出血は、標準療法群の2.2%(52例/2405例)に対し、リバーロキサバン群の1.1%(26例/2412例)で、リバーロキサバン群で有意に低い結果となった(HR:0.49[95%CI:0.31-0.79]、p=0.0032)。そのほか、肝機能異常はみられなかった。
これらの結果から、Buller氏は、「年齢、体重、性別、腎機能やがんの合併によらず、一貫した有効性と安全性だった」と説明した。その上で、これまでの“EINSTEIN‐DVT”、“EINSTEIN-Extension”を合わせたpooled analysisの結果を提示し、DVT+PE患者の最初のVTEの再発抑制をめぐり、ハザード比は0.89で非劣性のマージン(1.19)を満たしたと説明した。また、最初の大出血+臨床上重大な出血のハザード比は0.93([95%CI:0.81-1.06]、p=0.27)で非劣性を示したほか、大出血は0.54で([95%CI:0.37‐0.79]、p=0.0018)で、有意に低い結果となった。
Buller氏は、同治療により、患者と医師に、「シンプルな1つの薬剤でのアプローチを提供する」と有用性を強調した。