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【AHAリポート】AIM-HIGH スタチン治療へのナイアシン追加投与の有用性見いだせず

公開日時 2011/11/21 06:55

HDL-C低値の心疾患患者に対し、積極的な脂質低下療法に、徐放性ナイアシンを追加投与することで、心血管イベントの発生リスクは抑制できず、追加投与の意義は認められなかった。11月12~16日まで、米国・オーランドで開催された米国心臓協会年次学術集会(AHA)2011で、11月15日に開催された「Late-Breaking Clinical Trials」セッションで、AIM-HIGH Investigatorsを代表して、William E.Boden氏が、「AIM-HIGH(Atherothrombosis Intervention in Metabolic Syndrome with Low HDL/High Triglycerides : Impact on Global Health Outcomes)」試験の結果を報告する中で明らかにした。(望月英梨)


心疾患患者の治療に際し、スタチン治療により目標としたLDL-C値に到達しているにもかかわらず、心血管系リスクが残存することが指摘されている。
試験は、心疾患と診断され、スタチンと必要に応じたエゼチミブによる最適化した脂質低下療法を受けているにもかかわらず、HDL-C値が低い患者に、徐放型ナイアシンを上乗せすることで、残されている心血管イベント発症リスクを軽減することができるか、長期間追跡し、検討した。


対象は、①冠動脈性疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患(PAD)のいずれかを合併する45歳以上②脂質異常症(ベースライン時のHDL-C低値:男性<40mg/dL、女性<50mg/dL、TG:150~400mg/dL、LDL-C<180mg/dL)――を満たす患者。米国とカナダの92施設から登録された。
すべての患者は、シンバスタチン40~80mg/日を投与し、必要に応じてエゼチミブ10mg/日を追加投与し、LDL-C値が40~80mg/dLにコントロールした。その上で、試験開始時に4~8週間のrun-in期間を設け、シンバスタチン40mg/日に加え、徐放性ナイアシンを500mg/日から1週間ごとに2000mg/日まで増量した。
①徐放性ナイアシン1500~2000mg/日投与群1718例②プラセボ投与群1696例――の2群に分け、治療効果を比較した。主要評価項目は、冠動脈疾患死+非致死性心筋梗塞、虚血性脳卒中+急性冠動脈疾患(ACS)による入院+冠動脈、脳血行再建による症状。


同試験は、有効性を満たしていないこと、徐放性ナイアシン投与群で虚血性脳卒中の発生が増加していることが懸念されたことから、データ安全性モニタリング委員会が中止を勧告し、2011年5月25日に中止された、追跡期間(平均)は、36カ月間。


患者背景は、平均年齢が64±9歳、男性が85.2%、白人が92.2%、糖尿病合併が33.9%、高血圧合併が71.4%などだった。シンバスタチンの投与は40mg/日未満、40mg/日、40mg/日以上がプラセボ群で11%、50%、25%。一方、ナイアシン群では19%、50%、18%だった。一方、エゼチミブは、プラセボ群で22%に対し、ナイアシン群では10%でプラセボ群で有意に高い併用率となった(P<0.001)。


◎ナイアシン投与群でHDL-C値は有意に上昇


ベースライン時にスタチンを投与されていた群(3196例)では、LDL-C値(中央値)が71mg/dL、平均HDL-C値が35mg/dL、TG値が161mg/dLだった。ベースライン時のスタチン投与群は、全体の94%を占め、スタチンの投与期間は1年以上が76.2%、5年以上が39.5%だった。
一方、スタチン非投与群(218例)では、LDL-C値が119mg/dL、HDL-C値が33mg/dL、TG値が215mg/dLだった。


2年経過時点の脂質のプロファイルをみると、ナイアシン群では、HDL-C値(中央値)が35mg/dLから42mg/dLで25.0%上昇したのに対し、プラセボ群では35mg/dLから38mg/dLで9.8%の上昇にとどまり、ナイアシン群で有意に上昇した(p<0.001)。TG値は、プラセボ群の8.1%に対し、ナイアシン群は28.6%、LDL-C値は、プラセボ群の5.5%に対し、ナイアシン群で12.0%いずれも有意に減少した(p<0.001)。


主要評価項目の発生率は、プラセボ群の16.2%(274例)に対し、ナイアシン群では16.4%(282例)で、ハザード比は1.02で、ナイアシン群で上昇する傾向がみられた([95%CI:0.87-1.21]、p=0.79 log-rank test)。
一方で、虚血性脳卒中の発生率は、プラセボ群の0.9%(15例)に対し、ナイアシン群では1.6%(27例)で有意差はないものの、上昇する傾向が示された(HR:1.61 [0.89-2.90]、p=0.11)。


そのほか、ナイアシン群は副次評価項目である冠動脈疾患死+心筋梗塞+虚血性脳卒中+ハイリスクのACS(1.08 [0.87-1.34]、p=0.49)、冠動脈疾患死+心筋梗塞+虚血性脳卒中(1.13 [0.90-1.42]、p=0.30)、心血管系死亡(1.17 [0.76-1.80]、p=0.47)で、いずれもナイアシン群で高い発生率となる傾向がみられた。
これらの傾向は、年齢、性別などによらず一貫した傾向を示した。


結果を報告したBoden氏は、前治療としてスタチンが94%、ナイアシンが20%投与されていたことに触れ、「ナイアシンの良好な効果を示すには限界があった」と指摘した。また、プラセボ群でも予期せぬHDL-C値の上昇がみられたことから、2群間の有意差を少なくしたと指摘した。


Boden氏は一方で、主要評価項目の発生率が16.2%だったことから、5.4%/年の心血管イベント発生リスクがあることを指摘。その上で、「LDL-C値が70mg/dL未満で、安定、非急性冠動脈疾患患者に対し、スタチン治療にナイアシンを追加投与した積極的な治療を実施することは、36カ月の追跡期間で、HDL-C値とTG値の有意な改善をを認めたものの、臨床的効果は認められなかった」と結論付けた。また、この結果から脂質治療においてLDL-C値が主なターゲットであると記載された現行のガイドラインである「NCEP ATP-Ⅲ」の内容を再確認したとした。
なお、同試験の結果は同日付の「The New England Journal Of Medicine」に掲載された。
 

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