抗血小板薬・Ticagrelor FDAから追加解析を求められる
公開日時 2010/12/24 04:00
アストラゼネカは同社が米FDAに申請中の抗血小板薬・Ticagrerolに関する審査完了報告通知(complete response letter)を受け取り、臨床データの追加解析を要請されたと発表した。これによりブリリンタの承認は遅れる見通し。
アストラゼネカはFDAへの承認申請に当たり、急性冠症候群患者(ACS)を対象に、アスピリン+Ticagrelorと、アスピリン+クロピドグレルの効果と安全性を比較した「PLATO(A Study of Platelet Inhibition and Patient Outcomes)」試験の結果を提出している。
試験は、43カ国の1万8624例を対象に実施された。主要評価項目(心血管死亡+心筋梗塞+脳卒中の複合エンドポイント)の発生率は、Ticagrelor9.8%、クロピドグレル11.7%で、相対リスクは16%減少し、Ticagrelor群で有意に抑制した(p<0.001)。一方、安全性の評価項目である大出血はTicagrelor群11.6%、クロピドグレル群11.2%で出血傾向に両群間で有意差はみられなかった(p=0.43)。
しかし、米国で試験に登録された患者に限定して解析すると、主要評価項目の相対リスクが有意差はみられないものの27%上昇していることが分かった。なお、米国以外の42カ国を対象に解析すると、逆に相対リスクは19%減少しており、試験全体の結果と同様の傾向が認められていた。そのため、米国での試験結果の解釈を巡って専門家の間でも様々な議論が行われていた。
アストラゼネカは、米国のみでリスクが上昇するという矛盾した結果になったことについて「米国では、他の地域に比べ、アスピリンを高用量で使う」ことを理由に挙げ、発売時に低用量アスピリンと併用すべきという旨をラベルに記載することも提案していた。
これに対し、7月28日に開催されたFDAの心血管腎臓用薬諮問委員会では、他の要因も考えるべきとの意見も提示されていた。また、一部の委員からは、より小規模な市販後研究を行う必要性も指摘されていた。
今回の追加解析の要請により、一部のアナリストからは、最短でもTicagrelorの承認は1年遅れるのではないかとの観測も浮上している。米国では2012年5月にプラビックス(一般名=クロピドグレル)が特許切れを迎え、ジェネリック品が参入し始める。このためTicagrelorが、プラビックスに対して大幅な優位性を示せずに承認取得が1年以上遅れた場合、市場ではプラビックスのジェネリック品が優勢となり、Ticagrelorの市場プレゼンス確保が難しくなるとの声も少なくない。
(The Pink Sheet Daily 12月20日号より)