【WSCリポート】日本人外来脳卒中患者20%がPADを合併
公開日時 2010/10/15 06:00
日本人の外来脳卒中患者における末梢血管障害(PAD)の発症率は、約20%であることが分かった。慶應義塾大医学部神経内科特別研究准教授の星野晴彦氏が、韓国・ソウルで開催されている第7回世界脳卒中学会(WSC)の中で、10月14日のポスターセッションで報告した。(韓国・ソウル発 望月英梨)
最近になって、脳血管疾患、冠動脈疾患、PADなどアテローム血栓性の動脈疾患を合併する“polyvascular disease”という病態があると指摘され始めた。星野氏らはこのような状況を受け、日本人の脳卒中患者におけるPADの発症率を検討する目的で検討を行った。
対象は、同院を外来受診している127人の脳卒中患者。腕と足の血圧値を同時に測定する
“ABI検査(Ankle Brachial pressure Index)”を実施。動脈硬化の進展度合いを表す指標であるABI値が0.9未満の患者をPADとした。ABI値は、高い方の足関節収縮期血圧値/高い方の上腕収縮期血圧値で定められている。
◎PAD 無症状の患者が約6割
その結果、ABI値<0.9となったのは17.3%。このうち、左側だけが32%、右側だけが14%、両側にみられたのが55%となった。足の痛みやしびれ(間歇性跛行)などの症状がみられたのは40.9%にとどまり、無症状の患者が59.1%を占める結果となった。
TOAST分類により、脳卒中の病型分類をみると、アテローム血栓性脳梗塞が28.2%で最も多く、TIAの25.0%が次いだ。アテローム血栓性も約8割が無症状だった。
そのほか、解析の結果、糖尿病はPADと関連する独立危険因子として浮かび上がっていることも報告した。
結果を報告した星野氏は本誌取材に応じ、「脳卒中患者のPAD発症率は、予想よりも多かった」と述べ、脳卒中患者の治療に際し、“polyvascular disease”が隠れている可能性があると注意喚起した。
PADを診断する上では、「まず、患者さんの手や足の脈を触ってみること」の重要性を強調した上で、「ABI検査は、PADの診断においてプライマリケア医でも有用」との見解を示した。