【ESMOリポート】afatinib 進行非小細胞肺がん患者の無増悪生存期間を延長 全生存期間は延長せず
公開日時 2010/10/12 06:00
EGFRを標的とした治療薬イレッサやエルロチニブの治療後に進行してしまった非小細胞肺がん患者を対象にしたEGFR、HER2受容体を標的とするafatinibのフェーズ3試験結果(LUX-Lung 1試験)が10月11日(現地時間)、イタリア・ミラノで開催された第35回欧州臨床腫瘍学会議(ESMO)で報告された。主要評価項目の全生存期間(OS)は最適な支持療法(Best Supportive Care)のみを実施した群と比較して有意な延長は認められなかったが、無増悪生存期間(PFS)は3.3カ月と、プラセボ群に比べ有意に延長した。
同剤は、標的に対し結合したまま(不可逆的結合)作用するのが特徴で、これまでのイレッサやエルロチニブとは異なる。イレッサやエルロチニブによる治療後に進行してしまった同がん患者に対する治療法は確立されていない。その中での今回の試験結果は、主要評価項目を満たさなかったとはいえ、病勢の進行を遅らせられる可能性を示す結果となった。
同試験は585人を、BSC群195人とそれにafatinibを加えた群(afatinib群)390人を無作為に割り付け。主要評価項目はOSで、PFSは副次評価項目として設定されて、行われた。試験結果は、治験責任医師を務めるメモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(米国)の準指導医(Associate Attending Doctor)のバンス A. ミラー博士が、口頭で発表した(Late-Breaking演題)。
結果では、OSはafatinib群10.78カ月、BSC群11.96カ月と、有意な差は認められなかった(HR=1.077、p=0.7428)。背景には、病状悪化の被験者に対し、さらなる追加治療が認められているため、それがBSC群を後押しし、差につながらなかったとみられる。
その一方で、PFSについては、afatinib群は3.3カ月で、BSC群1.1カ月と、有意に延長した(HR=0.38、p<0.0001)。PFSの延長は、すべての患者サブグループで認められた。また、腫瘍の部分縮小など何らかの反応があった全反応率はafatinib群11%、BSC群0.5%。肺がんに伴う咳や息切れなど呼吸困難、疼痛も有意に改善され、咳、呼吸困難スコア、胸痛の悪化までの時間が遅らせる効果もみられ、QOLの改善につながる可能性も示された。
予期せぬ有害事象に関する所見はなく、主な副作用は下痢および発疹であった。afatinibは、独ベーリンガーインゲルハイムが開発中で、開発コードは「BIBW 2992」。米国では優先審査扱い。日本ではafatinibの1日1回経口連続投与でのオープン第1/2相試験のLUX-Lung 4を実施。進行非小細胞肺がん患者を対象とした第1相試験、ゲフィチニブ、エルロチニブ耐性の非小細胞肺がん患者を対象とした第2相試験が進められている。
訂正(15日午後9時34分)
被験者の割り付けをafatinib群200人とあったのは、正しくは390人です。訂正しました。