【ESMOリポート】抗HER2療法の継続はラパチニブ+カペシタビン併用後の有効な治療オプション
公開日時 2010/10/12 06:02
抗HER2療法後に進行したHER2陽性の転移性乳がん患者で、ラパチニブとカペシタビンの併用療法群とカペシタビン単剤を比較検討した第III相試験の事後解析結果がイタリア、ミラノで開催された第35回欧州臨床腫瘍学会議(ESMO)のポスターセッションで、10月9日にアイルランド、Irish Clinical Oncology Research GroupのJohn Crown氏らにより報告された。ラパチニブとカペシタビンの併用はカペシタビン単剤と比べて、追跡期間中に抗HER2療法を継続しなかったサブグループでの全生存を有意に35%向上させたことが明らかになった。また、抗HER2療法の継続は、ラパチニブとカペシタビンの併用療法後の有効な治療オプションであることも示唆された。
◎EGF100151の事後解析から
同予備解析は、HER2陽性の局所進行性または転移性の乳がんで、アントラサイクリン系、タキサン系療法、トラスツズマブの前治療歴があり、過去にカペシタビン療法は受けていない患者408人を対象に、ラパチニブ+カペシタビンの併用(ラパチニブ 1250mg qd + カペシタビン 2000mg/㎡/d, days 1-14 q3 wk)と、カペシタビン単剤(2500mg/㎡/d, days 1-14 q3 wk)を比較検討した、無作為化オープンラベル第III相試験EGF100151から、追跡期間中に抗HER2療法を継続した被験者と、継続しなかった被験者の全生存を比較したもの。
併用群(207人)のうち、追跡期間中に抗HER2療法を受けたのは80人(39%)、抗HER2療法を含まない治療を受けたのは70人(34%)、57人(28%)は治療を受けなかったか、または死亡していた。一方単剤群(201人)では、それぞれ102人(51%)と、57人(28%)、42人(21%)となった。
追跡期間中の抗HER2療法の内訳は、併用群では73人(91%)がトラスツズマブ単剤、4人(5%)がトラスツズマブとラパチニブの併用、3人(4%)はラパチニブ単剤を受け、単剤群では45人(44%)がトラスツズマブ単剤、30人(29.5%)がトラスツズマブとラパチニブの併用、27人(26.5%)はラパチニブ単剤を受けていた。
解析の結果、被験者全体における全生存の中間値は、併用群が75週間に対し単剤群では64.7週間と、併用群に長い傾向が見られた(HR:0.87, 95% CI, 0.71-1.08, p=0.210)。特に追跡期間中に抗HER2療法を受けなかったサブ群では、併用群が68.6週間に対し単剤群は56週間に留まり、併用群が有意に長いことが判明した(HR:0.65, 95% CI, 0.45-0.95, p=0.019)。一方、抗HER2療法を受けたサブ群では、併用群109.1週間、単剤群96週間(HR:0.80, 95% CI, 0.57-1.13, p=0.207)となり、抗HER2療法を受けた併用群がで、最も長い生存期間を示すことも明らかになった。
◎研究グループ「ラパチニブの使用は後続の抗HER2療法の有効性を低減させる訳ではない」
これらの結果から研究グループは、積極的な追加治療が適切と考えられる患者において、抗HER2療法の継続はラパチニブとカペシタビンの併用療法後の有効な治療オプションであると結論した上で、ラパチニブの使用は後続の抗HER2療法の有効性を低減させる訳ではないこともわかったと述べた。また同解析は、事前に計画されたものではなく、治療後の変数で定義されたサブ群をもとに実施された事後解析であり、解釈には注意が必要であると付け加えた。【修正済】