糖尿病診断基準案 HbA1c≧6.1%を項目の1つに
公開日時 2009/11/02 04:02
糖尿病診断基準の改訂案が11月1日、明らかになった。これまで診断基準の項目でなかったHbA1c≧6.1%が新たに加わる。ただし、HbA1cに一本化するのではなく、空腹時血糖値、75gOGTT値(75g経口ブドウ糖負荷試験)2時間値、随時血糖値に併記される項目の1つにとどまった。日本糖尿病学会の「糖尿病の診断基準に関する調査検討委員会」(清野裕委員長)が東京都内で開催したシンポジウムで報告した。診断基準の改訂は、1999年以来、10年ぶり。
今回の改訂作業にあたり、調査検討委員会は6回の会合を開き、中間報告を取りまとめた。診断基準の策定を急いだ背景には、米国糖尿病学会(ADA)や欧州糖尿病学会(EASD)で診断基準をHbA1cに一本化するとの議論があったため、日本のスタンスを明確にする必要があったことがある。
しかし、HbA1cに指標を一本化すると、これまで糖尿病と診断してきた患者の半数近くを見逃すことになるなどとの指摘を受け、ADAやWHOは態度を軟化させてきた。
調査検討委員会では、これらの議論も踏まえ、空腹時血糖値だけでも、HbA1c値だけを診断基準にしても不十分と判断。空腹時血糖値≧126mg/dL、75gOGTT2時間値≧200mg/dL、随時血糖値≧200mg/dLに、HbA1c≧6.1%を加えることとした。現行の診断基準では、血糖値が基準値を1度超えた場合に限り、HbA1c≧6.5%を“補助的”に用いていた。そのため、今回の改訂案でより厳格な値を定めたこととなる。これは、世界各国の糖尿病専門医が一堂に集った会議でも、コンセンサスを得られた値であるという。
◎JDS値とNGSP値の併記求める 将来的にはNGSP値に一本化へ
一方、HbA1c値については、国際的な標準化が進められている。世界各国で、HbA1c値を測定する際の標準物質が異なることから、値が異なると指摘されていたが、換算式が確立されるなど測定法や国家間のばらつきが解消され始めた。
検討委員会では、これまで用いてきたJDS値を“HbA1c”値として用いることに加え、米国で確立され、諸外国で汎用されるNGSP値をすべて大文字の“A1C”として併記することを提唱した。なお、NGSP値はJDS値よりも0.4%高い値で示されるという。
中国や韓国などでは、すでにNGSP値を用いていることなどから、検討委員会では、国際共同治験や医薬品などの開発で日本がリーダーシップをとるためにもNGSP値を国内普及する必要性があると判断。将来的には、JDS値を用いず、NGSP値に一本化する考えも示した。
今後は、糖尿病学会へ新診断基準案を提案し、学会の評議委員、学会員の意見を集約。来年の早い段階で、新診断基準として発表し、糖尿病ガイドラインや糖尿病治療ガイドにも反映していく考えだ。
(※編集部注:HbA1cの“1c”は小文字、下付きです)