厚生労働省の薬食審医薬品第一部会は2月7日、新薬など5成分を審議し、承認することを了承した。この中には骨粗鬆症治療では初となる抗体医薬品のプラリア皮下注(成分名・デノスマブ遺伝子組換え)がある。同薬は半年に1回の皮下注製剤。また、中枢神経に作用してアルコール依存症の断酒維持を補助するレグテクト錠(アカンプロサートカルシウム)や機能性ディスペプシア治療薬のアコファイド錠(アコチアミド塩酸塩水和物)も新薬として承認が了承された。
承認が了承されたのは次の通り。
【審議品目】
▽アコファイド錠100mg(成分名・アコチアミド塩酸塩水和物、会社名・ゼリア新薬):「機能性ディスペプシアにおける食後膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。1回1錠を1日3回投与する。海外での承認はない。
同薬は、消化管運動の亢進に重要な神経伝達物質アセチルコリンの分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼを阻害し、胃運動の低下や胃からの食物排出遅延を改善する。類薬にはガスモチン、ガナトンなどがある。アステラス製薬との共同開発で、共同販売の予定。
▽プラリア皮下注60mgシリンジ(デノスマブ遺伝子組換え、第一三共):「骨粗鬆症」の効能・効果を追加とする新効能・新用量医薬品。海外60カ国以上承認済み。再審査期間は残余(2020年1月17日まで)。6か月に1回皮下注する。
同薬はヒトモノクローナル抗体で、破骨細胞の形成や機能にかかわる蛋白質「RANKL」を標的とする世界初の抗体医薬品。12年4月に同一の有効成分を含有するランマーク皮下注が「多発性骨髄腫による骨病変および固形がん骨転移による骨病変」を効能・効果として発売された。ランマーク発売後は重篤な低カルシウム血症が報告され、「安全性速報」(ブルーレター)が出ている。7日の部会の報告品目にはRANKL阻害剤投与に伴う低カルシウム血症の治療および予防を効能効果とする配合錠が含まれる。
▽レグテクト錠333mg(アカンプロサートカルシウム、日本新薬):「アルコール依存症患者における断酒維持の補助」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。海外28カ国・地域で承認済み。1回2錠を1日3回投与する。
エタノール依存で増加したグルタミン酸作動性神経の活動を抑制。類薬の抗酒薬にはジスルフィラム、シアナミドがあるが、中枢神経に作用して飲酒の欲求を抑える国内初の薬剤。10年5月に厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」から開発要請されていた。
▽リリカカプセル25mg、同75mg、同150mg(プレガバリン、ファイザー):「神経障害性疼痛」の効能・効果を追加とする新効能医薬品。末梢性神経障害性疼痛、繊維筋痛症に伴う疼痛に加え、中枢性の神経障害性疼痛が追加された。再審査期間は残余(2018年4月15日まで)。
▽ボルベン輸液6%(ヒドロキシエチルデンプン130000、フレゼニウスカービジャパン):「循環血液量の維持」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。海外75カ国以上承認済み。
等張性の人工膠質液で、既存の製剤に比べて凝固因子系への影響などが少なく、高用量の投与が可能。厚労省によると、感染リスクのあるアルブミン製剤の使用削減が期待できるという。
【報告品目】
▽エクア錠50mg(ビルダグリプチン、ノバルティス):「2型糖尿病」の効能・効果とする新効能医薬品。海外104カ国承認済み。すでに認められていたスルホニル尿素(SU)薬に加えてインスリン製剤を含む全ての糖尿病治療薬との併用が可能になる。
▽リバロ錠1mg、2mg、4mg(ピタバスタチンカルシウム、興和):「高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症」の効能・効果とする新用量医薬品。従来の1日1回夕食後投与の指定が解除される。海外10カ国承認済み。
▽シュアポスト錠0.25mg、0.5mg(レパグリニド、大日本住友製薬):「2型糖尿病における食後血糖推移の改善」を効能・効果とする新効能医薬品。海外90カ国以上で承認済み。従来のα―グルコシダーゼ阻害薬に加え、ビグアナイド系薬剤、チアゾリジン系薬剤との併用が認められる。
▽ミンクリア内用散布液0.8%(l‐メントール、日本製薬):「上部消化管内視鏡治療における胃蠕動運動の抑制」の効能・効果を追加とする新効能医薬品。海外未承認。上部消化管内視鏡検査に上部消化管内視鏡治療が追加となる。
▽グルトパ注600万、同1200万、同2400万(アルテプラーゼ遺伝子組換え、田辺三菱製薬)、アクチバシン注600万、同1200万、同2400万(同、協和発酵キリン):「虚血性脳血管障害急性期に伴う機能障害の改善(発症後4.5時間以内)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。使用範囲が発症後3時間以内から4.5時間以内に広がる。
▽インデラル錠10mg、20mg (プロプラノロール塩酸塩、アストラゼネカ):「片頭痛発作の発症抑制」の効能・効果を追加とする新効能・新用量医薬品。本態性高血圧症や狭心症、期外収縮といった循環器領域とは異なる効能・効果が加わる。
▽デノタスチュアブル配合錠(沈降炭酸カルシウム/コレカルシフェロール/炭酸マグネシウム、日東薬品工業):RANKL阻害剤投与に伴う低カルシウム血症の治療および予防を効能・効果とする類似処方医療用配合剤。
その他7日の部会では、▽プレドニン錠5mg(プレドニゾロン)のデュシェンヌ型筋ジストロフィーの効能・効果追加の公知申請が了承された。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で公知申請が妥当とされた適応外薬で、今回の了承で半年程度かかる正式承認を待たずして、保険が適用される。
【訂 正】レグテクト錠の記事中で、記述に誤りがありました。正しくは、「エタノール依存で増加したグルタミン酸作動性神経の活動を抑制」です。下線部を訂正しました。(修正済 5月20日 10:35)