米国立衛生研究所(NIH)の国立橋渡し科学加速センター(National Center for Accelerating Translational Science:NCATS)は、製薬企業が臨床試験で脱落させた化合物について、その化合物の再利用のため適応症の再目的化を推進するプロジェクトを開始した。
NCATSは、製薬企業から臨床試験で脱落した化合物58剤の提供を受け、適応症の再目的化を目指すパイロット・プロジェクト。58剤のなかでは、ファイザー社が17剤、次いでアストラゼネカ社が14剤を提供する。製薬企業は化合物の提供ばかりでなく、現在までのデータも提供する。NCATSは、これらデータを学術的研究者がアクセスできるようにする。
イーライリリー社も当初からこのプロジェクトに参加を表明、NCATSが5月に同パイロット・プロジェクトを発表後は、アボット社、ブリストルマイヤーズスクイブ(BMS)社、グラクソスミスクライン(GSK)社、ヤンセンファーマシューティカル・リサーチ&デベロップメント社(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、サノフィ社が参加し、合計8社となった。
58剤は各企業によって8薬効領域、90の適応で研究・開発されていた。すべてがフェーズIあるいはIIで、安全性の問題はなかった。29剤が少なくとも1つ以上の中枢神経系の適応、9剤が疼痛、13剤は呼吸器系の適応(うち7剤はCOPDの適応)を目的に開発されていた。
研究者は、NCATSのこれらのリストを参照、適応症の再目的について提案を行うことが出来る。NCATSは、2013年度に6つから8つのプロジェクトに2億ドルを支援する計画だ。
NCATSが公開した企業の化合物一覧は以下の通り。企業、化合物、作用機序、適応症、投与経路の順。
*アボットラボラトリーズ
ABT―639、カルシウムチャネル、電位依存性(Cav3,2,T-Type)遮断剤、疼痛、経口
ABT―288、ヒスタミンH3受容体拮抗剤、統合失調症における認知障害、経口
ほか1化合物。
*アストラゼネカ
AZD―2423、ケモカイン(C-C motif)受容体2拮抗剤、COPD/疼痛、経口
ZD4054/zibotentan、エンドセリン受容体A拮抗剤、腫瘍/ 肺動脈高血圧、経口
AZD1656、グルコキナーゼ活性化因子、糖尿病、経口
MED12338、インターロイキン-18阻害剤、COPD/ 冠動脈疾患、静注・皮下注
AZD5904、 ミエロペルオキシダーゼ (MPO)阻害剤、COPD/ 多発性硬化症、経口
AZD7268、σオピオイド受容体作動薬、不安うつ病、経口
AZD0530、Srcチロシンキナーゼ阻害剤、腫瘍、経口
ほか7化合物。
*BMS
Pexacerfront(BMS- 562086)、コルチコトロピン放出因子1受容体拮抗剤、大うつ病/全般性不安障害/過敏性腸症候群、経口
BMS-830132、グルコキナーゼ活性化因子、2型糖尿病、経口
ほか1化合物。
*イーライリリー
LY2828360、カンナビノイド受容体2作動薬、変形性関節症疼痛、経口
LY500307、エストロゲン受容体B(ERB、ESR2)作動薬/核内受容体3A2作動薬、良性前立腺肥大症(BPH)/下部尿路症候群、経口
LY2245461、5-ヒドロオキシトリプタミン7A受容体作動薬、片頭痛、経口
ほか1化合物。
*GSK
GSK1004723、ヒスタミンH1/H3受容体拮抗剤、アレルギー性鼻炎、局所投与
GSK835726、ヒスタミンH3受容体拮抗剤、アレルギー性鼻炎、経口
Tainetant(SB223412)、タキキニン受容体/ニユーロキニン3受容体拮抗薬、咳・COPD・統合失調症・過敏性腸症候群・過活動膀胱、経口
ほか1化合物。
*ヤンセン
JNJ-18038683、5-ヒドロオキシトリプタミン7A受容体拮抗薬、大うつ病、経口
JNJ-39393406、ニコチン性アセチルコリン受容体、α7(α7nAchR)陽性アロステリック調節因子、統合失調症における認知障害、経口
ほか1化合物。
*ファイザー
Otenabant(CP-945598)、カンナビノイド受容体1拮抗剤、肥満症、経口
PF-04136609、ケモカイン(C-C motif)受容体2拮抗剤、慢性変形性関節症疼痛、経口
Prinaberel (PF-00913086)(ERB-041)、エストロゲン受容体B(ERB、ESR2)作動薬/核内受容体3A2作動薬、子宮内膜症、経口
CE-210666、5-ヒドロオキシトリプタミン1B受容体拮抗薬、うつ病、経口
PF-04995274、5-ヒドロオキシトリプタミン4受容体部分作動薬、胃食道逆流症・アルツハイマー病、経口
ほか12化合物。
*サノフィ
SSR149744 C、抗不整脈薬(ボーン・ウィリアムズ分類IからIV)、心房細動における同調律維持・除細動器を埋め込んだ患者におけるショックや主要臨床アウトカムの予防、経口
Antaciguat(HMR1766)、可溶性グアニル酸シクラーゼ活性化因子、狭心症・末梢動脈疾患・神経因性疼痛、経口
SAR103168、マルチキナーゼ阻害剤、固形がん・急性骨髄性白血病、静注
AVE8134、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)α/ 核内受容体1C1 作動薬、2型糖尿病、経口
ほか6化合物。
The Pink Sheet 7月9日号