ROADMAP試験 オルメサルタン投与で糖尿病性腎症の発症抑制 ただ致死性心血管イベントの発症率は増加
公開日時 2011/03/11 04:02
2型糖尿病患者に、ARB・オルメサルタンを投与することで、糖尿病性腎症への発症を抑制することが分かった。一方で、オルメサルタン群で有意に致死性心血管イベントの発症率が高いことも報告された。欧州で行われた「ROADMAP(Randomized Olmesartan and Diabetes Microalbuminuria Prevention)」試験の結果から分かった。3月10日付の医学誌「The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE」に掲載された。
試験は、2型糖尿病患者にARB・オルメサルタンを投与することで、微量アルブミン尿の発症または進展を抑制できるか検討することを目的に実施された。微量アルブミン尿は、糖尿病性腎症の指標であるとともに、心血管の指標ともなる。そのため、同試験では、この結果が同剤の心血管保護作用につながるかどうかも検討している。
対象は、微量アルブミン尿陰性(normoalbuminuria)で、少なくとも1つ以上の心血管リスクを持つ2型糖尿病患者4447例。①オルメサルタン40mg/日投与群2232例②プラセボ投与群2215例――に分け、治療効果を比較した。主要評価項目は、最初に微量アルブミン尿が発症するまでの期間。追跡期間は3.2年間(中央値)。
◎致死性心血管イベントの発症率 冠動脈疾患合併患者で有意差
その結果、微量アルブミン尿はオルメサルタン群で8.2%(178例/2160例)みられたのに対し、プラセボ群では9.8%(210例/2139例)に発生した。最初にアルブミン尿を発症するまでの期間(中央値)はオルメサルタン群で722日、プラセボ群では756日で、オルメサルタン群で有意に23%延長したことが分かった(ハザード比:0.77、95%CI:0.63~0.94、P値=0.01)。
複合心血管イベントの発症率には有意差はみられなかったが、致死性心血管イベントの発症率はオルメサルタン群で0.7%(15例)、プラセボ群では0.1%(3例)で、オルメサルタン群で有意に多い結果となった(P値=0.01)。
冠動脈疾患の合併患者に絞って致死性心血管イベントの発症率をみると、オルメサルタン群で2.0%(11例/564例)、プラセボ群では0.2%(1例/540例)で、有意にオルメサルタン群で多いことも示された(P値=0.02)。
なお、両群ともに血圧コントロールは良好で、目標とした130/80mmHg未満をオルメサルタン群で約80%、プラセボ群で71%が満たした。血圧値(中央値)はオルメサルタン群で3.1/1.9mmHg低かった。
これらの結果から研究グループは、「現在の標準療法である血圧コントロールがすばらしかったとしても、オルメサルタンの投与による、微量アルブミン尿の発症抑制効果はみられた」と結論付けた。ただし、オルメサルタン群では、冠動脈疾患を合併する患者で、致死性心血管疾患の発症が高いことについては、考慮する必要があることも指摘している。
なお、慢性透析患者は全世界でも増加の一途をたどっており、日本国内には推計30万人の患者がいるとされる。糖尿病性腎症は、透析患者増加の最も大きな原因とされている。糖尿病性腎症は、進行が早いことから、早期発見、早期治療と予防が重要視されている。