ソフトバンクG・孫会長 “医療データ×AI”で「SB TEMPUS」設立 米Tempusと合弁会社 創薬支援も
公開日時 2024/06/28 04:53
ソフトバンクグループの孫正義代表取締役会長兼社長執行役員は6月27日、東京都内で記者会見し、“医療データ×AI”のリーディングカンパニーである米国のTempus AI, Inc.と出資比率各50%の合弁会社「SB TEMPUS(エスビーテンパス)」を設立すると発表した。資本金は300億円。合弁会社は、①遺伝子検査、②医療データ収集・解析、③AIによる治療選択肢レコメンド―の3サービスを予定。米国の遺伝子検査データ770万人分のデータの利活用で、日本のがん治療の中核拠点13医療機関と提携する。製薬企業向けには、合弁会社が得たリアルワールドデータで創薬支援を事業化するとし、すでに国内製薬企業トップと直接話し合い、感触を得たと明かした。
◎日本の製薬企業は「アジアの中で少なくとも圧倒的な№1になるべきだ」 孫会長
孫会長は製薬側の感触について、「昨日、一昨日と日本のトップ製薬会社の社長と今回の件を話した。米Tempus社の770万人分のがん患者のデータはすぐにでも創薬に使いたいと話してくれた」と、強い手ごたえを感じたと胸を張った。続けて、「日本人のデータにもアクセスできるということで、日本の製薬産業の復活というか、アジアの中で少なくとも圧倒的な№1になるべきだと話した。日本人特有のがん遺伝子の変異を見つけて、少しでも早く新薬を開発するということは、日本の医学界の発展に大いに役立つ。製薬企業の社長さんたちも大いに興奮していた」と語り、医療データのAI解析による医療変革の意義を強調した。
◎「SB TEMPUS(エスビーテンパス)」の稼働は8月 年内にサービス提供開始
合弁会社「SB TEMPUS(エスビーテンパス)」の稼働は8月を予定。年内に各種サービスの提供を開始する。キーは医療データの収集・解析にある。米Tempus社は全米2000医療機関と提携し、電子カルテ、遺伝子データ、病理データ、画像データをリアルタイムに集積している。データ収集に際しては、病院側で電子カルテデータの統合・標準仕様への変換は行わず、米Tempus社側が独自開発した「アダプター」を用いてデータを処理し、そのままTempus AIデータベースで解析され、最適な治療オプション(治療薬を含む)を医療者に提示する流れとなっている。さらに米国では、AI解析によるレコメンドとして、新たな治療法や標準外治療の臨床試験も提示することができるという。
◎強みはデータセット 米・がん患者の登録数が770万人
強みのデータセットは、がん患者の登録数770万人で業界最大規模。このほか画像100万件、病理97万件、DNA/RNA22万件を有する。これらは全て「SB TEMPUS(エスビーテンパス)」でも利用可能となる。特に、遺伝子検査の実施率が0.7%の日本に対し、米国は30%と高い。遺伝子検査による個別化医療への期待感が高まる中で、業界最大のデータ量をもつ同社の強みが発揮される可能性は高いと強調する。孫会長は、がん治療の中核病院である、がん研有明病院をはじめ、慶応大、東大、名古屋大、京大、九大など13病院とデータ連携で提携したことを明らかにした。
◎孫会長「TEMPUS日本上陸は、ある種の“きっかけ”。がん治療の夜明けを一気に開花させる」
孫会長は、「私は昨年父をステージ4のがんで亡くした。もう途方に暮れましたね。いろんな制度上の問題とか費用とかいろいろあるかもしれないが、(患者にとって)それが1日でも早く、1人でも多くの命を助けるとの1点は誰も反対しないだろう。方法論は皆で話し合えばいいと思うが、今回のTEMPUS日本上陸は、ある種の“きっかけ”だ。日本のがん治療の夜明けを一気に開花させる。そこに今来たと私は思う」と述べ、医療事業にかける意気込みを表現した。