塩野義製薬・上原本部長 抗肥満薬S-309309の開発戦略「単剤からGLP-1併用・切り替え」に方針転換へ
公開日時 2024/06/10 04:50
塩野義製薬の上原健城・医薬開発本部長は6月7日の「SHIONOGI R&D Day2024」説明会で、同社が開発中の肥満症治療薬S-309309について、「単剤でなく、GLP-1 アナログとの併用や切り替え」に開発戦略を見直す考えを示唆した。BMI30以上の成人を対象とした米国での第2相臨床試験で、単剤開発の可否判断とした投与24週目の体重減少率(投与24週目・5%超)が未達だったことによるもの。ただ、ヒトでの体重減少傾向が確認されるなど、「肥満治療における新たなオプションの可能性が示唆された」とし。上原本部長は、「安全性や治療継続、自己負担軽減などアンメッドニーズ解消の視点で今後の開発戦略を検討したい」と強調した。
米国で行った肥満症治療薬S-309309の第2相臨床試験は、BMI30以上の成人を実薬群とプラセボ群に無作為化(3用量・プラセボ各80例、計320例)したものについてベースラインから24週目の体重変化率を主要評価項目としてみた。現時点で試験結果は速報段階で、詳細データは解析中。上原医薬開発本部長は、「単剤で戦うために少なくとも(体重減少率は)5%はないといけないとしてクライテリアを引いたが、残念ながら未達だった」と説明。続けて、「とは言え体重減少効果は確認できた。新たな作用機序での食欲抑制による体重減少を示す薬剤であるということは確認した」と述べ、今後の開発戦略について、「どのようなアンメッドニーズを満たすことができるか、いろいろな検討を進めている状況」と強調した。
◎社会や患者の求めるアンメッドニーズの解消に見合う開発戦略を検討
その上で、今後の開発戦略に言及し、「タイトレーション(用量調節)の途中でドーズ・エスカレーションすることが大変な患者さんもいる。なるべく少ない量の GLP-1で同じだけの効果が得られるのであれば、低分子のS-309309の活かしどころになる」と指摘。非臨床試験の結果からGLP-1アナログの体重低下作用に対し、S-309309のアドオンで「相加上の上乗せ効果を発揮した」とのデータを示した。さらに、GLP-1である程度体重が下がったので薬剤投与を止めるケースや、副作用や患者の費用的問題で治療継続を諦めるケースも想定されるとし、「社会的に問題になるリバウンドを抑えるべく、緩やかに体重をコントロールしながら、体重低下したものを維持する使い方もできるのではないか」と述べ、社会や患者の求めるアンメッドニーズの解消に見合う開発戦略を今後検討する考えを強調した。
◎ジョン・ケラーR&D管掌 肥満症、睡眠障害、認知症、難聴など治療薬開発にも注力
ジョン・ケラーR&D管掌はこの日の説明会で、成長を牽引する感染症領域(急性感染症、AMR、HIV、ワクチン)に加えて、肥満症、睡眠障害、認知症、難聴などの「社会的影響度の高いQOL疾患」の治療薬開発にも注力する方針を示した。特に、抗肥満薬市場については、「GLP-1製剤の登場で市場が飛躍的に拡大する」と予測。さらに、複数の疾患や症状が絡み合う睡眠時無呼吸症候群については、24年~30年の年率成長率が6.5%、30年の市場予測は約1.2兆円が見込まれるとし、Apnimed社とジョイントベンチャーを設立したほか、「S-600918+併用薬」の第2相臨床試験を24年度第3四半期に開始する計画などを明かしてくれた。