久光製薬は４月13日、2024年２月期（23年３月～24年２月）の国内医療用医薬品売上は546億円、前年同期比2.8％の増収との予想を発表した。最主力品の経皮鎮痛消炎剤・モーラステープ群は売上239億円、前年同期比40億円の減収を見込む一方、腰痛症などの適応を持つ新規の経皮吸収型持続性疼痛治療薬・ジクトルテープは売上64億円、前年同期から41億円伸ばすなどして国内医療用医薬品事業（以下、国内事業）を成長させる方針を示した。国内事業の基盤であるモーラステープは13年２月期の776億円をピークに減収し続け、これに併せて国内事業も右肩下がりに推移していたが、ジクトルでこれまでのトレンドを変える。

◎ジクトル　整形外科で処方拡大目指す　腰痛症などの適応で

ジクトルは非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）を含有する全身性の経皮吸収型製剤。通常、１日１回２枚を貼布し、約24時間毎に貼り替えて使用する。21年５月に「各種がんにおける鎮痛」の効能・効果で発売。22年６月に長期投与が解禁されるとともに、「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎における鎮痛・消炎」の効能を追加した。同社の舛屋泰之執行役員BU本部長は同日の決算会見で、ジクトルは６月の効能追加を機に大きく処方拡大したとし、「引き続き、説明会や講演会を通じて先生方に『全身性製剤』の特長を適切に伝えていく」と述べた。

24年２月期（23年度）の同剤の成長戦略は磯部雄一企業戦略室長が説明。「現時点で整形外科を中心に営業活動を継続している。ジクトルの特長を理解いただいた施設や先生方では継続的に使用されている」と手応えを示した上で、「今後もそこで営業活動し、説明会や講演会を行い、処方の伸びを見込んでいる」と述べ、特に整形外科における腰痛症などでの処方獲得を図る考えを示した。

◎ジクトルの63枚処方制限　「処方の伸びが鈍化するとは考えていない」

厚労省は23年４月５日付の事務連絡で、ジクトルを「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎における鎮痛・消炎」の適応で使用する場合、処方せん１枚当たり63枚という湿布薬の処方上限（＝63枚処方制限）が適用されることを周知した。この事務連絡が23年度の同剤の成長に与える影響に関して南秀尚執行役員渉外担当は、22年度診療報酬改定で63枚処方制限ルールが導入され、モーラスなどに適用されたことに伴い、ジクトルも医療現場では既に63枚の制限下で使用されていると説明。そして、「今回の事務連絡によって、特段、処方の伸びが鈍化するとは考えていない」とし、「丁寧に本薬の特長を説明することで処方が伸びる」と強調した。

◎国内初の原発性手掌多汗症治療薬・アポハイド　疾患啓発にも注力

23年度の国内事業はジクトルテープの売上拡大のほか、国内初の原発性手掌多汗症治療薬であるアポハイドローションの上市にも注力する。アポハイドは３月27日付で承認され、現在薬価収載の手続き中。同社によると、有病率は５～６％、潜在患者数は約600万人だが、受診して治療するとの認識のない疾患でもある。このため疾患啓発活動にも注力する方針だ。

◎22年度連結業績は増収増益　円安効果もあって海外好調　国内医療用薬は2.6％減収

23年２月期（22年度）の連結業績は売上1283億3000万円（前年同期比6.8％増）、営業利益115億9900万円（24.2％増）、親会社帰属純利益117億4200万円（21.6％増）で、２期連続で増収増益を達成した。円安によって海外事業の収益を押し上げたほか、海外での新型コロナによる制限解除も後押して連結ベースでは好調だった。日本市場では主に▽薬価改定影響、▽後発品影響、▽収益認識に関する会計基準の適用――により、医療用医薬品事業、一般用医薬品事業ともに減収だった。

国内の医療用医薬品事業は売上531億3500万円（2.6％減）で、特にモーラステープの２ケタ減収が響いた。モーラステープ群は売上279億3000万円（11.4％減）で、22年４月の薬価改定でテープＬ40mg製剤は6.0％の薬価引き下げを受けた。ジクトルは売上22億1900万円で、前年同期から売上げは９倍以上、19億円強の増加となった。

【22年度連結業績（前年同期比）　23年度予想】
売上高1283億3000万円（6.8％増）　1323億円（3.1％増）
営業利益115億9900万円（24.2％増）　118億円（1.7％増）
親会社帰属純利益117億4200万円（21.6％増）　106億円（9.7％減）

【22年度の国内主要製品売上（前年同期実績）　23年度予想　億円】
モーラステープ群　279.30（315.13）　239
ジクトルテープ　22.19（2.38）　64
ハルロピテープ　28.33（36.14）　39
モーラスパップ群　39.48（48.46） 34
フェントステープ　37.26（35.07） 34
エストラーナテープ　20.55（18.96） 21
アレサガテープ　3.98（4.22） 4
その他　85.25（72.45）　94