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Blackstone・坂本代表が会見 TCHC社は「買われる側から買う側へ」 まずは新会社の成長最大化に注力

公開日時 2020/09/04 04:52
米大手投資ファンドThe Blackstone Group Inc.の坂本篤彦プライベートエクイティ部門日本代表は9月3日、武田コンシューマーヘルスケア(TCHC社)の株式買収と今後の対応について記者会見に臨んだ。坂本代表は、武田薬品のノンコア部門であるTCHC社の経営資源の投入が不足していることが、「近年の売上減少要因の一つではないかと考える」と指摘。不足していた経営資源(ヒト、モノ、カネ)をBlackstoneが提供することで、新会社の成長を最大化すると表明した。成長プランとして、初期に積極的な投資を行い、中長期で製品領域の拡大や、中華圏・アジア展開を推進、Eコマースの拡大、スイッチOTCの強化などを目標に掲げた。

◎Blackstone グローバル投資の20~30%がヘルスケア領域

Blackstoneは、60兆円以上を運用する世界最大級の投資ファンド。ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しており、時価総額は6.8兆円規模(武田薬品は6.3兆円)。各種経営資源を提供し、投資先企業の中長期の成長をサポートしている。Blackstoneのグローバル投資の20~30%がヘルスケア領域だという。その一つがあゆみ製薬だ。2019年4月に「リウマチバイオシミラーのリーダーへ」というミッションを定義し、経営資源を提供した結果、21年3月までに11%成長を達成できると見通す。

一方、研究開発段階の医薬品に約5000億円を資金提供する「ライフサイエンスファンド」を持つ唯一のグローバルファンドでもある。直近ではAlnylam(アルナイラム)の高コレステロール治療薬のグローバル展開に向けた臨床試験やマーケティング費用で約1000億円を投資した。さらに、フェリング社に対しては、膀胱がん治療薬の開発を進めるため400億円を投資。当該領域のエキスパートを経営陣に紹介するなど資金面以外のサポートも行っている。

◎3つの経営資源(ヒト、モノ、カネ)の提供

坂本代表は会見で、TCHC社の全株式買収までの経緯に触れ、アリナミンやベンザのブランドがそれぞれ業界ナンバー1の地位を確立していたと指摘。ただ、TCHC社の売上高はタケダグループのわずか2%に過ぎず、「成長のための十分な経営資源が配分されていない可能性がある」と強調。その上で、TCHC社の成長を最大化するためには、3つの経営資源(ヒト、モノ、カネ)を提供することが求められ、これによりコンシューマー・ヘルスケアのリーディングカンパニーを目指すことができるとの見解を明示した。

具体的に「ヒト」については、雇用の維持、給与・福利厚生など雇用条件の維持を約束し、ストックオプションや新従業員持株会の導入も検討するとした。また、次のステップを見据え、独立企業となる上で必要な追加人材(IT部門等)についても今後の議論を通じて積極的に採用する姿勢を示した。

◎新会社と補完的な企業、製品の積極的なM&Aを検討する

Blackstoneが提供する経営資源のうち「モノ」については、同社のネットワークを活用し、データ分析やITシステムへのアドバイス、さらには海外のネットワークを活かした海外展開の加速などに注力する。「カネ」については、これまで親会社である武田薬品へのライセンス料の支払いが無くなることから、「稼いだ金を積極的に再投資するとともに、大型M&Aのための資金をBlackstoneから提供する」とも述べた。なお、Blackstoneは一切の配当も受け取らないという。

坂本代表は、「今後、新会社と補完的な企業、製品の積極的なM&Aを検討する」と述べ、「今回のような買われる側から買う側へ」の転換を進めていく考えを強調した。


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