通常用量のARBを投与しても十分な降圧が得られない2型糖尿病合併高血圧患者に対し、ARBの増量よりもCa拮抗薬を上乗せした方が高い降圧効果が得られることが分かった。3月6日のLate Breaking Clinical Trialsで、順天堂大循環器内科の代田浩之氏が「ADVANCED-J」の結果を報告する中で明らかにした。
2型糖尿病合併高血圧患者では、厳格な降圧を求められることから、第1選択薬のARBを、通常用量を投与しても降圧目標に到達しない症例が多いと指摘されている。このような降圧目標に到達していない症例には、▽用量の増加▽Ca拮抗薬、利尿薬の併用――のいずれかを選択することが高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)では推奨されている。
試験は、ARBを投与しても血圧が十分コントロールできない患者に対し、▽ARBの増量▽Ca拮抗薬の上乗せ――のどちらが有用か比較することが目的。対象は、通常用量のARBを8週間以上投与しても、起床後家庭血圧値が130/80mmHg以上で、20歳以上の2型糖尿病合併高血圧患者。
▽ARB増量群97人▽Ca拮抗薬のアムロジピン5mg/日上乗せ群87人――の2群に分け、起床後家庭血圧値125/80mmHg未満を目指した治療を行い、効果を比較した。追跡期間は3年間。ただし、降圧目標に至らず、必要であると判断したケースでは、複数の薬剤を併用することを可能とした。主要評価項目は、起床時家庭血圧値のベースライン時からの変化。
その結果、起床時家庭血圧値は、ARB増量群でベースライン時の157.3/84.4mmHgから139.6/76.3mmHgまで減少した。一方、Ca拮抗薬上乗せ群では、158.2/82.5mmHgから132.8/72.3mmHgまで減少した。Ca拮抗薬上乗せ群では投与開始8週から大きな降圧を示し、投与8週後、12カ月後、24カ月後、36カ月後のすべてのポイントで収縮期・拡張期ともARB増量群よりも有意な降圧を示した。ただし、試験終了時(P値=0.033)は投与開始8週後(P値<0.001)ほどの大差はなかった。降圧目標を達成した割合は、Ca上乗せ群で20.5%、ARB増量群では14.9%で、有意差はないもののCa拮抗薬上乗せ群が上回る結果となった(P値=0.586)。就寝前家庭血圧値、職場血圧値でも、同様にCa拮抗薬上乗せ群は、ARB増量群より大きな降圧を示した。
副次評価項目である頸動脈内膜中膜肥厚(IMT)の変化については、投与開始12カ月、24カ月、36カ月のポイントでは有意差は見られなかったが、分散分析(ANOVA)で全体を解析すると、Ca拮抗薬で有意に減少する結果となった(P値=0.018)。
そのほか、脈波伝播速度(PWV)や、eGFRについても、Ca拮抗薬上乗せ群で有意に良好な結果となった。有害事象については、両群間で差はみられなかった。
なお、ARB増量群では90例(68.2%)、Ca拮抗薬上乗せ群では54例(41.2%)で、他剤の併用を行っていた。内訳は、ARB増量群では、α遮断薬が59例(44.7%)、β遮断薬が39例(29.5%)、利尿薬が34例(25.8%)。Ca拮抗薬を併用している症例も28例(21.2%)あった。一方、Ca拮抗薬上乗せ群では、α遮断薬が40例(30.5%)、β遮断薬が23例(17.6%)、利尿薬が12例(9.2%)、さらにCa拮抗薬を併用している症例も6症例(4.6%)あり、多くの症例でさらに併用薬を追加している実態が伺える。
代田氏は、「ARBの増量群よりもCa拮抗薬併用群が良好だったということで、その有用性が示された」と結論付けた。その上で、降圧目標に達した症例が2割程度にしか満たなかったことから、両群ともに降圧が十分でなかったと指摘。「さらに併用が必要である可能性も示された」との見解も示した。また、臓器保護効果を表すIMTやeGFRについても、Ca拮抗薬上乗せ群で有意に良好な結果だったことから、臓器保護効果を考慮すると「比較的早くから十分な降圧が必要であるとのメッセージである」との見解も示した。