トランプ米大統領 FDA長官にGottlieb氏を指名か?
公開日時 2017/03/14 03:50
米複数メディアは3月10日、ドナルド・トランプ大統領はFDA(食品医薬品局)長官に元副長官のScott Gottlieb氏を指名する見通しを報じた。Scott Gottlieb氏は、44歳の医師で、ジョージ・W・ブッシュ(息子)政権時代にFDA副長官を務めた。現在、シンクタンクのAmerican Enterprise Institute社研究員、投資銀行T.R.Winston & Co社の常務などを務めている。
かねてからFDAの承認システムは「遅くて面倒だ」と指摘しており、過剰な規制は業界の規制を削ぐとスピーチやコラムでFDAの規制緩和を求める持論を展開していた。
ただ、同氏への期待の声は二分されている。FDA勤務経験やシンクタンク勤務などで製薬業界に精通していることから製薬業界からは歓迎されている一方、利益相反の観点などを指摘する声もあがっている。2013~15年の間に製薬企業から、コンサルタント業務や講演により、41万3000ドルを受け取っていることが明らかになっている。
ロイター通信によれば、コンサルタント会社Greenleaf Health社のJohn Taylor社長(弁護士、元FDA副長官代理)は、「Scottは、FDAがどう動くかを知っており、必ずしもFDAが気の向かない場合でもそれを前へ動かしていくだろう」と述べ、手腕に期待しているという。米・Washington Post紙も、FDAで共に勤務経験のある医師で民主党のヘルスケア専門家のKavita Patel氏が、「垣根を越えて仕事をこなせる。他人の意見を聞き、それを結果に反映できる」と仕事ぶりを評価していることを紹介した。
一方、消費者団体Public CitizenのMichael Cromeヘルスリサーチグループ長は、「Gottlieb氏はビッグファーマの蜘蛛の巣に取り込まれており、同氏が長官になれば、FDAのリーダーシップが患者の利益よりも製薬企業の利益を重視する決定をおこなうという10年来のFDAの傾向を加速するだけだ」と同氏の就任には懸念を示している。
しかし、Gottliebe氏は、昨年、経済誌「Forbes」のコラムに、製薬企業の不透明で不公平なリベートシステムが薬剤コストの上昇になっていることを批判し、高薬価を問題視する論文を発表している。トランプ氏の指名を議会が承認後、同氏がFDAをどう舵取りしていくか注目される。
◎PhRMAは歓迎
米国研究製薬工業協会(PhRMA)は、同日、トランプ氏による、Gottlieb氏のFDA長官指名を歓迎するStephen J Ubl理事長の声明を発表した。「Gottlieb氏は、医師としての経験またヘルスケアについての幅広い識見に基づいて、FDAが公衆衛生の保護や患者が必要とする医薬品の審査と承認についてのイノベーションにおいて重要な役割を果たし続けることを確かなものにする」と話した。