【World Topics】所得格差と健康
公開日時 2015/04/27 03:50
経済的に貧しい地域では、豊かな地域に比べて居住者の平均寿命が短いという認識はすでに定説だ。しかし、米国ウィスコンシン大学とジョンソン財団が共同で全米を対象に実施した「居住地域の社会経済的諸要因と住民の健康」の相関関係の分析 によって、地域 住民の健康に影響を及ぼすのは当該地域の「平均所得」水準(その地域が貧困地域であるか否か)だけではなく、住民間の「所得格差」もまた健康に深刻な影響を及ぼす要因となりうることが明らかになった。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
(County Health Ranking and Roadmap Project:
http://www.countyhealthrankings.org/about-project)
具体的には、同一地域内の住民間の所得格差の大きい郡(county)では、格差の小さい郡に比べて、同じ所得水準の住民が75歳をこえて生きる確率が有意に低くなる、つまり 所得格差の大きい地域では格差の小さい地域よりも短命になるというのである。
その理由について、研究者らの推論は① 高所得層と低所得層では同一郡内でも居住地域が分かれているため、生活環境を健康的に整えられる程度がそれぞれの地域で異なる、②自分より裕福な人に取り囲まれて暮らすことがすでに高いストレスを生む、③健康に関わるサービスが高所得層に買い占められてしまう可能性が高い––の3点をあげている。
下図はウィスコンシン大学研究チームが作成した所得格差マップ。地図上で色の濃いところほど所得格差が大きい。