大日本住友・新中計 ラツーダ依存脱却目指し抜本改革 日米の収益力強化
公開日時 2019/04/12 03:51
大日本住友製薬は4月11日、2018年度~22年度までの中期経営計画を発表した。売上の約4割を占める抗精神病薬ラツーダが最終年度には特許満了を迎える。しかし、上市予定の新たな抗精神病薬や抗がん剤だけでは23年度以降も成長を続けることが難しいと判断。ラツーダに依存した収益体質を脱却し、新たな「成長エンジンの確立」に向け抜本改革を行う方針を打ち出した。
不足するパイプラインを補うため、後期開発品を獲得する戦略的投資として3000~6000億円を用意する。並行して、新薬上市により日米の収益力を強化すると共に、中国事業を拡大する。その中で日本事業については約1100人のMR体制を維持しつつ、がん、抗精神病薬、糖尿病の新薬上市により売上を18年度見込みより400億円増の1700億円を目標に設定。23年度以降の早期の2000億円達成に向け事業体制を見直す。
同社は、第4次産業革命、高齢化の進展、医療財政のひっ迫、技術革新などで、これまでの延長線上にはないビジネスモデルの確立が迫られていると指摘。18年度を起点に15年後の2033年に目指す姿として、精神神経、がん、再生細胞の重点3領域で「医薬品」と「ヘルスケアソリューション」を提供する「グローバル・スペシャライズド・プレーヤー」を提示。そのビジョンの実現に向け今回の中計を策定した。
同社は、米国でのラツーダの後発品を巡る特許訴訟で和解したことで、中計期間中は特許が維持され、業績悪化は免れた。最終年度目標は、ラツーダや新薬の寄与を見込み、売上高は6000億円(18年度見込み4670億円)、コア営業利益は1200億円(同770億円)とした。売上の半分は精神神経領域、2割弱をがん領域で獲得する。
この中で最大の課題が、ラツーダに代わる新薬の創出・獲得だ。23年2月以降は後発品が参入、ラツーダの2000億円近い売上は急速に失われる。しかし、この時点では、成長ドライバーと位置づける新規抗がん剤・ナパブカシンは約900億円、ポストラツーダとして最優先に開発を進める「SEP-363856」(米国フェーズ2:23年度上市予定)を加えても新薬不足は明らか。そこで戦略的投資により、日米での上市を予定する精神神経領域の後期開発品を獲得し、23年度以降の成長につなげる姿を描いた。
国内MRは1100人体制 6割が精神神経とがん領域に
新たな事業基盤づくりも進める。日米では、次期主力品のナパブカシンの営業体制確立など事業体制を見直し、収益力を強化する。日本では新薬を軸に成長を図る。主力新薬として、糖尿病領域ではトルリシティ、imeglimin(21年度上市予定)、精神神経領域では抗パーキンソン病薬トレリーフ、抗精神病薬ロナセンテープ(19年度上市予定)、ルラシドン(20年度上市予定。海外名・ラツーダ)、がん領域ではナパブカシン(21年度上市予定。結腸・直腸がん、膵がん)を想定する。
目標売上1700億円のうち過半は糖尿病等によるものだが、MRはがん(病院担当が担う)と精神神経領域に約6割を充てる方針。そのためMRの専門性を高める。がん領域は営業・マーケティング組織を新たに構築する。MR体制は維持することから、デジタル化を推進し、効率化を図る。
再生・細胞医薬分野では、22年度にiPS細胞由来の2製品(パーキンソン病、加齢黄斑変性)の上市を計画。この分野の本格成長は23年度以降とし、次期中計からの収益貢献を目指し、事業体制を構築する。
そのほか、研究開発手法を見直し、新薬開発成功率を高める。得意な技術を持つ企業や研究機関との協力による「ネットワーク型」研究開発を進める。ビッグデータやデジタル技術の活用によるイノベーションの創出に挑戦する。最先端のサイエンスやテクノロジー、バイオマーカーを活かし、Precision
Medicineの実現にも取り組む。開発力の強化に向けては、成果を見据えた目標設定、事業リスクマネジメント、臨床試験の確度をあげるバイオマーカーやビッグデータなど最先端技術の取り込みを行う。
将来の第4の柱に掲げる「フロンティア事業」は、医薬品と組み合わせたヘルスケアソリューションの提供を実現するのが狙い。重点3領域の医薬品との組み合わせによりQOLが向上するデバイスなどの開発を想定。複数のパイロット事業から、シナジー、事業性を見極め、次期中計での「成長エンジンとしての確立を目指す」とした。