ギリアドとJT 抗HIV薬6製品の国内ライセンス解消で合意 ギリアドが19年から情報活動
公開日時 2018/11/30 03:51
ギリアド・サイエンシズ日本法人と日本たばこ(JT)は11月29日、JTが米ギリアド・サイエンシズからのライセンスに基づき日本で商業化、JT子会社の鳥居薬品を通じて販売している抗HIV薬6製品について、そのライセンス契約を解消することで合意したと発表した。ギリアド日本法人のHIV領域に特化したMR30人が、2019年初頭から情報提供・収集活動を始める。6製品の製造販売承認の承継は19年末までに行う計画。承継が完了するまで製品流通は引き続き鳥居が行う。
■JTは631億円、鳥居は432億円を受領
JTは契約解消に伴い、米ギリアド社から約631億円(5億5900万ドル)を受領する。JTは米ギリアド社との契約解消に伴い、鳥居との独占的販売権に関するライセンス契約も解消。この対価として、JTは鳥居に432億円を支払う。432億円の内訳は、ライセンス契約解消によるものが421億円、流通にかかる手数料が11億円となる。
今後、ギリアド日本法人が手掛ける抗HIV薬6製品は、▽ビリアード錠300mg▽エムトリバカプセル200mg▽ツルバダ配合錠▽スタリビルド配合錠▽ゲンボイヤ配合錠▽デシコビ配合錠LT/HT――となる。
米ギリアド社はこのほど、同社創製の3成分配合の新規の抗HIV薬Biktarvyの日本での承認取得及び販売をギリアド日本法人が行うことをJTに連絡するとともに、抗HIV薬6製品の国内ライセンスの契約解消を提案。JTと米ギリアド社、JTと鳥居のそれぞれで契約終了に向けた協議をしてきた。
■鳥居 抗HIV薬6製品と新規抗HIV薬Biktarvy、ギリアド販売が「より望ましい」
鳥居はこの日、抗HIV薬6製品の独占販売権の返還を決めた理由として、▽海外動向を見ると、既存抗HIV薬から新規抗HIV薬への移行はかなりのスピードで進んでおり、日本市場でも今後、既存抗HIV薬6製品の大幅な売上減が見込まれる▽抗HIV薬6製品の販売にこだわるのではなく、6製品の販売権を返還し、得られる対価を原資に今後の成長を目指していくことが採るべき選択肢である――と考えたと説明した。
JTから得られる432億円は、抗HIV薬6製品の販売を今後継続した場合に期待される利益と比較して「妥当な額」だと指摘。医療現場の側からみても、抗HIV薬6製品と新規抗HIV薬Biktarvyが同じギリアド日本法人から販売・情報提供される形の方がより望ましいと判断したとしている。6製品の17年度売上は約200億円。
■ギリアド日本法人・ハーマンス社長 「JTに感謝」 年内にBiktarvyを申請予定
ギリアド日本法人のルーク・ハーマンス社長はこの日、「15年以上にわたり強力なパートナーシップを築いてきたJTに対して感謝の意を表したい。おかげさまで、私たちのHIV感染症治療薬を必要としている多くの患者さんに届けることができた」とコメント。さらに、「HIVの治療と予防におけるグローバルリーダー企業として、日本に約2万9000人いるといわれるHIV陽性者の治療を改善し、よりシンプルな治療を届けるために全力を注ぐ」とした。
ギリアド日本法人は2012年に設立。C型肝炎治療薬ソバルディ、ハーボニーで存在感を発揮し、新規抗HIV薬Biktarvyを今後、国内投入することで製品ポートフォリオをより拡充させる。現在のMR数は約190人で、うち肝炎担当が約160人、HIV領域担当が30人。
同社広報部は本誌取材に、Biktarvyは日本で申請準備中で、年内申請を目指していると説明した。同剤はビクテグラビル(bictegravir)、エムトリシタビン(emtricitabine)、アラフェナミドフマル酸塩(tenofovir alafenamide)の3成分を配合したもので、1日1回1錠で用いる。18年2月に米国、6月に欧州で承認された。1~9月まで9か月の世界売上は6億ドル。