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東京医薬品工業協会などによる恒例の薬業四団体新年賀詞交歓会が1月9日、業界ほか行政の関係者など約780人の参加を得て、東京都内のザ・プリンスパークタワーで開かれた。主催者代表あいさつに立った東薬工の内藤晴夫会長(エーザイCEO)は、薬価制度改革案に対し「薬価制度が認めるイノベーションの範囲は大幅に縮小したと言わざるを得ず、極めて遺憾」と批判し、イノベーションの評価のあり方について引き続き議論する必要性を強調した。 この新年あいさつで薬価制度改革に関する部分は内藤会長が最も注力して作成した。同会長は、改革案の検討過程に対し「薬剤費を下げるという一点を目的とした議論が交わされきたという印象が強く、(「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」にある「国民皆保険の持続性」と)両立すべき「イノベーションの推進」という観点からは不十分な議論となった」と指摘した。 新薬開発は成功確率が極めて低く、多額の先行投資が必要であることを挙げ、開発が成功した新薬に対しては「正しく評価され、それが価格に反映される仕組みが極めて重要」と訴えた。一番手の新薬が上市されたのちも、有効性・安全性を改善する薬剤が開発されていることに触れ「何番手であったにしても、それは段階的なイノベーションにより臨床現場へ新たな価値を提供する革新的な医薬品」と説明した上で今回の改革案に対し「かかる改良型創薬活動が後退する」と懸念を示した。さらに、価値の評価に対し、薬剤そのものの価値だけではなく、薬剤により介護者や家族の介護などの負担軽減にもつながることがあるとして、それら「社会的な便益」「疾病負荷軽減」も考慮して評価するべきと持論を述べた。 薬価改定のあり方にも触れ「薬価改定の中間年に行う改定については、各年にわたる薬価調査や医療機関の在庫削減による緊急配送増加など医薬品卸売業者の負担増も懸念されることから、対象範囲を真に価格乖離の大きな品目に限定し、薬価調査を医薬品卸売業者の負担の少ない方法で実施するなど、医薬品の安定供給への影響等を踏まえた上で慎重に検討されるべき」と、厚労省に対応を求めた。 そのうえで「イノベーションにより生み出される価値とは何か、それらをいかに適切に評価するかについて、議論が継続されることを期待している」と話した。他方、政府が、予算措置が伴う「日本創薬力強化プラン」を策定したことに謝意を述べた。 また、不祥事があったMR活動にも言及し「実績のみならず、法令順守と人事評価に反映させることなどによりMR活動の適正化に向け取り組んでいる」と説明した。 高木・厚労副大臣 薬価制度改革に理解求める 流通改善「積極的に取り組む」 来賓あいさつに立った高木美智代・厚生労働副大臣は、薬価制度改革案に対する内藤会長の指摘に対し「しっかり受け止め、今後とも取り組ませていただきたい」と応えつつも、財政が非常に厳しい状況にあり、政府の基本方針である「国民皆保険制度の持続性」と「イノベーションの推進」の両立、「国民の負担の軽減」と「医療の質の向上」を実現するものだとして理解を求めた。 医薬品流通にも触れ、偽造品の流通防止に「徹底した取り組み」を求める一方、流通上の積年の課題に対しガイドラインを策定し対応する方針について「流通の適正化に向けて積極的に取り組む」と、国の姿勢を強調した。他方、AIの開発やゲノム医療の進展など新たな創薬環境を見据え、コストを低減し効率的な創薬環境を整備する「日本創薬力強化プラン」には「全力で取り組む」と表明した。 東京生薬協会・藤井会長 多剤投与の改善に取り組み必要 薬事功労受賞者あいさつで 新年賀詞交歓会では17年度薬事功労者受賞者に対する表彰も行われ、厚生労働大臣表彰を受賞した東京生薬協会の藤井隆太会長(龍角散社長)が代表であいさつし、患者の高齢化に伴い生じている多剤投与に対し業界サイドから改善に向けた取り組みを呼びかけた。藤井会長は、厚労省の社会保障審議会医療保険部会の委員でもある。 藤井会長は、高齢化などで頻回受診、重複受診が増える一方で、処方薬の一元管理が十分にできていないことを挙げ「高齢の方がいっぺんに10種類も薬をのめというのは難しい。結局のめないで捨ててしまう。なんとも悲しい。我々は捨てられるために薬を作っているのではない」と述べたうえで、患者の行動変容に向け「医師、薬剤師の先生方に協力をいただきながら、業界としても汗を流す」とし、開発した薬剤を無駄にせず、適正な使用を促す取り組みも必要だと指摘した。
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