バイエル薬品 イグザレルト問題発覚後に褒賞付きプロモーションを実施
公開日時 2017/08/01 03:52
抗凝固薬イグザレルト問題がメディアの報道や国会で取り上げられていた今年3月~5月にかけて、バイエル薬品はMRを対象とした褒賞付きのインセンティブ・プロモーションを実施していたことが本誌取材で明らかになった。イグザレルトの年間計画に対する単月目標のうち9%以上達成したMRや営業所に対し、インセンティブが与えられていたという。5月と言えば、厚労省から5月29日付で副作用報告遅延が指摘された時期に相当する。
バイエル薬品は7月31日、厚労省に対し、イグザレルトを含む全品目についての副作用症例について報告した。報告した未報告副作用は85例。イグザレルトは77例、バイアスピリンが4例で、うち2例はイグザレルトを併用していた。このほかスチバーガとネクサバールからも報告があがった。同社は同日のプレスリリースで、「有害事象報告に対する社員の意識向上に向けた再教育を徹底し、包括的な再発防止策を講じる」とコメントしている。
そもそも、この副作用問題のきっかけは、宮崎県の診療所で行ったイグザレルトの患者アンケート調査に絡み、MRなどの不適切なカルテ閲覧や、アンケート結果を利用した資材作成など本社の関与を検証するなかで、副作用報告遅延の存在が発覚したもの。バイエル薬品は5月29日時点で、「当該問題に関し、外部専門家を交えた調査過程で今回の副作用症例を確認した」と説明したが、実は、その裏では、イグザレルトの症例獲得と売上確保を狙った、全国レベルでのインセンティブ付きプロモーションが行われていたのだ。
◎MR個人単位、エリア単位など様々企画
イグザレルトのインセンティブ付きのプロモーションは、MR個人単位、エリア単位など様々企画されていたという。年計(年間計画)のうち、単月計画の達成率(9%)をこの時期に限って通常より高めに設定し、これをクリアしたMRや営業所に対し、褒賞が与えられていたという。外資系製薬企業の多くは1~12月決算のため、上半期業績(1~6月)にウエイトを置く場合、3~5月の時期を集中プロモーションに充てるという考え方は、確かにこの業界にある。ただ、イグザレルト問題をめぐっては、ちょうど同じ時期にメディアを通じ、この問題が発覚し、国会や厚労省、製薬協がこの問題に関心を向けた時期とも重なる。本誌は4月19日付のニュースで、「イグザレルトの情報提供活動自粛・発売5周年イベントも中止」と報じたが、実は、発売5周年記念イベントだけが中止され、逆に褒賞付きの販売促進を目的とした営業活動が大々的に行われていた。