バイオシミラー協議会が見解 バイオAG参入は「バイオ医薬品産業全体の発展を阻害」
公開日時 2017/05/17 03:52
バイオシミラー協議会(南部静洋会長)は5月16日、一部の製薬企業が承認取得に向けて準備を進めているバイオ医薬品のオーソライズド・ジェネリック(AG)について、「バイオ医薬品産業全体の更なる発展を阻害する可能性がある」との具申をまとめ、厚労省医政局経済課長宛てに提出した。先行品と同一とされるバイオAGの参入に伴い、バイオ後続品および企業の市場締め出しに強い危機感を表明したほか、今後10年以内にバイオ医薬品産業の柱に成長が期待される遺伝子治療・再生医療製品などにも影響を及ぼしかねないことへの懸念も滲ませている。
バイオAGをめぐっては、協和発酵キリンが2019年に特許切れする腎性貧血治療薬ネスプの国内製造販売承認の取得に向けて準備しており、今年1月18日には「協和キリンフロンティア」を設立した。同社も、医療環境の変化やニーズの多様化、医療費抑制などに対応する方針を打ち出しているところ。
これに対しバイオシミラー協議会が公表した「バイオAG(仮称)に対する見解」によると、「(バイオ後続品について)まだ広く理解と浸透が進まない状況下において、先行品と同一とされるバイオAGが承認される場合には、バイオ後続品の浸透に深刻な影響が生じる」と指摘。「バイオ後続品のみならず、バイオ医薬品産業の成長機会の喪失に併せ、イノベーションの停滞にもつながることが懸念される」と強調した。
◎バイオ後続品 複数製品間の市場競争で継続性ある医療費の削減を達成
バイオシミラー協議会がこうした懸念を表明する背景には、2つの課題がある。一つ目の課題とは、がんや自己免疫疾患などの難治性疾患に対し、バイオ医薬品の需要が拡大されるなかで、その多くを海外からの輸入に依存し続ける恐れがある。2つ目の課題とは、低分子医薬品に比べて高価なため、経済的な理由による使用抑制や、医療費の高騰など国民皆保険制度の持続性に与える影響も大きいという点だ。
昨年12月21日に政府が公表した「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」においても、バイオシミラーの研究開発支援方策等の拡充や、ベンチャー企業への支援などを盛り込んでいる。
同協議会としては、バイオ後続品を通じ、先行品と同様の治療選択肢をより安価で提供する方策などの検討を現在進めており、今回のバイオAGの市場参入に伴い、バイオ後続品とこれに関わる企業そのものの市場締め出しに強い危機感を募らせているのだ。一方でバイオ産業界と産官が連携してバイオ後続品を育成することで、国内の製造技術や分析技術を培い、バイオ医薬品の国内供給力の増強に努めることも可能となる。加えて、バイオ後続品の浸透に伴う複数製品間の市場競争が生じることで、継続性ある医療費の削減を達成するとしており、現時点でのバイオAGの参入はバイオ産業全体への影響が大きいとの立場だ。
◎第3回バイオシミラーフォーラム バイオ後続品を通じ革新的バイオ薬時代に備える
この日は東京都内で同協議会主催の「第3回バイオシミラーフォーラム」が開催された。厚労科学特別研究事業「バイオシミラー使用促進のための課題解決に向けた調査研究」の豊島聡主任研究者(武蔵野大学薬学部客員教授)は、バイオシミラーの開発・使用促進に向け、規制の整備やガイドラインの充実などを求めた。特に使用促進の観点からは、①医師など医療従事者や患者への認知度向上の取り組み、②先行バイオ医薬品とバイオ後続品の互換性(interchangeability)と代替処方の考え方、および承認要件の明確化を求めた。
さらにバイオ医薬品全般の開発を通じ、来たるべき遺伝治療・再生医療製品など革新的バイオ医薬品の時代に備えるための準備を進めるべきとの見解を強調した。