ラクオリア創薬 テゴプラザンの日本導出未達、子会社の資産・負債増加で連続営業赤字 25年は黒字必達
公開日時 2025/02/18 04:51

ラクオリア創薬の須藤正樹代表取締役は2月17日にオンラインで開催した24年12月期決算説明会で、2025年の営業黒字化を必達目標に掲げた。同社は24年中に予定した胃酸分泌抑制剤テゴプラザンの提携先候補企業との契約が未達に終わり、さらにファイメクス社の子会社化に関連して資産と負債が大幅に増加するなど、2期連続で通期業績予想の下方修正を招いた。この結果、昨年12月には武内博文社長(当時)が経営責任をとって辞任。急遽、須藤氏が代表取締役に昇格した。須藤氏はこの日の説明会で、「株主価値の向上に向けて粉骨砕身努力をすることが私の使命だと考えている」と述べ、事業収益の改善に邁進する考えを表明した。なお、24年12月期決算は、事業収益31億700万円と過去最高だったが、契約一時金の期ずれ等で期初計画比31.4%減。営業損失2億1300万円、当期純損失4億9500万円となった。
ラクオリア創薬は、ファイザー・中央研究所の閉鎖を受けて2008年2月にエンプロイー・バイアウト(EBO)によって設立された。低分子化合物を中心に医薬品の候補物質を創出し、その特許を製薬企業にライセンスアウト(導出)して収入を得る事業モデルをとっている。近年は、新規モダリティの多様化に対応するため、標的タンパク質分解誘導剤(TPD)関連のプラットフォームを有するファイメクス社を24年3月26日に完全子会社化した。
◎テゴプラザンの早期ライセンス契約「24年中の契約を目指したが成約できず」
同社の自社創製品には、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)・テゴプラザンがある。同剤は、韓国のHK inno.N社や、中国のShandong Luoxin Pharmaceutical Group Stock Co., Ltd.などに導出済み。15か国で販売されており、ロイヤルティ収入等で貢献している。ただ、同社にとってビジネス上の成功のカギは市場性の高い日本でのテゴプラザンの早期ライセンス契約締結にある。須藤代表取締役はこの日の説明会で、「2024年中の契約を目指したが提携先候補企業の意思決定に至らず成約できなかった」と報告。これに伴い事業収益が10億円減少したと明かした。テゴプラザンの権利譲渡は、前・武内博文社長時代からの継続案件で、この間、契約金が得られず計画未達が続き、同社の株価下落にも大きく影響していた。
須藤代表取締役は、日本国内の契約交渉について、「提携先候補企業とはテゴプラザンの日本国内での早期上市という目標を共有している」と述べ、 25年12月期の成約を目指す方針を改めて強調した。
◎子会社・ファイメクスの事業収益が当初計画を下回る「新規契約の締結に至らず」
一方で、子会社ファイメクスの事業収益が当初計画を下回ったことも事業収益に影響した。須藤代表取締役は、「アステラス製薬との共同研究により目標達成による一時金および研究協力金で6億100万円を受領した」と報告する一方で、「新規契約の締結に至らず、期初目標比4億9900万円の減少になった」と説明。「2025年度以降収入の達成確度を見直す」と表明した。
ファイメクス社は、標的タンパク質分解誘導薬の創製に取り組むプラットフォーム技術を有しており、自社創製だけでなく、製薬企業との共同研究によるパイプライン創出に寄与すると期待している。須藤代表取締役は、「収益目標未達で営業黒字もなかった。ただ、マイルストーン達成に係る一時金2億円と研究協力金を合わせて6億円の収益をあげた」と述べながらも、「当社グループが掲げる新規モダリティの拡充も大きく好転している。いまは結果を出す過程にあると私達は考えている。新規契約が取れなかったことは事実で、こちらは十分を反省し、対策をとりたい」と強調。「25年は新規の契約獲得は必達目標として取り組む必要がある」と明言した。
説明会の質疑では、前社長の経営責任を問う質問が投げかけられた。須藤代表取締役は、「武内取締役(現職)は株価に対する責任を取って24年12月末で代表取締役を辞任した。そして3月末で全ての役職から退かれる判断をされた。投資判断や経営判断にミスがあったので法的責任というものではない。現時点で武内取締役に法的責任の追及を検討する予定はない」と強調した。