アステラス製薬・岡村社長 ロボとAI活用した細胞製品「90%以上を自動化」 大幅な開発期間短縮に期待
公開日時 2025/07/14 04:52

アステラス製薬の岡村直樹代表取締役社長CEOは7月11日、インターフェックスWeek東京2025で講演し、AIとロボティックスを活用した細胞医療製品の製造自動化の取り組みを紹介した。同社では安川電機とともに双腕ロボットを用いた細胞培養に取り組んでおり、すでに細胞製造プロセスの90%以上の自動化を実現。技術移転もデータを共有するだけででき、AIによるプロセスの最適化も行っている。岡村社長は、「最先端の技術を応用することが可能になり、研究初期からGMP製造が可能になるまでの期間を1~3年ほど短縮できると見込んでいる」と期待を込めた。
◎安川電機と協業 双腕ロボット「Maholo」活用 細胞収率など「マニュアルとほぼ同等」
アステラス製薬では、細胞医療の事業化に向けて、産業用ロボット製造大手の安川電機と協業。細胞医療製品の製造自動化を見据えて、安川電機グループのロボティック・バイオロジー・インスティテュート社と国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)が開発した汎用ヒト型ロボット「Maholo(まほろ)」を活用している。
細胞医療は低分子医薬品に比べて、原材料や培養の手技など製法変更が製品の特性に大きく影響し、同等性や同質性の証明が困難と言われる。製造自動化にあたっては、こうした職人技に頼っていた部分や複雑な生産プロセス、高度な品質管理といった課題がハードルとなっていた。
双腕ロボットのMaholoは、1台で複数の複雑な培養プロトコルを実行できる能力を持つ。細胞の拡大培養から分化、選別、濃縮など細胞製造プロセスの90%以上ですでに自動化を実現しているといい、岡村社長は、「細胞収率でもバイオマーカーの発現で見ても、マニュアルで行われたものとほぼ同等のものが生成できている」と手応えを示した。
◎プロセス開発にも強み ワンクリックのデータ共有で技術移転も容易に
また、プロセス開発の面でも、データを共有するだけで容易に技術移転を行うことができ、AIの活用でプロセスの最適化も図ることができる。研究開発ステージや地域を超えた展開が可能で「国内でも海外でも同じプロセスで動かすことができ、製品開発までの期間が1~3年ほど短縮できる」と強調した。
◎細胞医療でアカデミアや企業とも連携 「最先端の細胞医療エコシステム実現へ」
アステラス製薬と安川電機との間では、細胞医療製品の製造プラットフォーム開発や、アカデミアや企業向けのプラットフォーム提供を行う合弁会社の設立に向けてパートナーシップを結んでいる。細胞医療やロボティックスに強みを持つ両社の知見に加えて、細胞医療に取り組むアカデミアや企業を巻き込む構想だ。岡村社長は「アイデアやノウハウを活用していくことで最先端の細胞医療のエコシステムを実現していきたい」と抱負を述べた。