AZ 新型コロナ抗体薬・エバシェルド 発症抑制目的の投与対象は約16万人、初回分は「十分足りる」
公開日時 2022/09/27 04:51
アストラゼネカ(AZ)の松尾恭司・ワクチン・免疫療法事業本部長は9月26日に開いた新型コロナ抗体薬・エバシェルドに関するメディア勉強会で、新型コロナのワクチン接種では十分に免疫を獲得できない者に対する同剤のウイルス曝露前投与(発症抑制目的の投与)の対象患者数について、「約16万人と推定している」との認識を示した。国が同剤を15万人分確保し、発症抑制目的のみに使用する方針を示していることから、松尾氏は「初回投与としては十分に足りると思っている」と述べた。また、反復投与に関してPMDAと協議を始めたことを紹介するとともに、「日本への追加供給の必要があれば日本に(製品を)持ってきたいが、ここは今後の検討課題」と話した。
エバシェルド筋注セットは、新型コロナに感染して回復した患者により提供されたB細胞に由来する2種類の長時間作用型抗体(LAAB)であるチキサゲビマブ(遺伝子組換え)とシルガビマブ(遺伝子組換え)を併用するもので、8月30日付で特例承認された
(記事はこちら)。AZが独自に有する半減期延長技術を適用し、1回の投与後少なくとも6カ月間、ウイルスからの保護が持続されることが示されている。
同剤は薬事承認上、新型コロナ発症後の治療目的と、発症抑制目的に使える。ただ、厚労省は9月1日付の事務連絡で、同剤は安定供給が難しいことから一般流通は行わず、厚労省が所有した上で、同剤特有の効能であるワクチン接種では十分な免疫を獲得できない者に対する発症抑制目的での投与に限り、同剤を配分・供給する方針を示した
(記事はこちら)。ワクチン接種では十分な免疫を獲得できない者は、日本感染症学会のガイドライン「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第14版」(以下、学会GL)の中で、「原発性免疫不全症の患者」や「積極的な治療を受けている血液悪性腫瘍の患者」など11の患者像が具体的に列挙されている。
松尾氏はこの日、学会GLで列挙された患者を積み上げると約16万人になると説明。「コロナ禍において、ワクチンによって十分な免疫を獲得できない可能性がある免疫機能が低下している患者さんのアンメットニーズは満たされないままだった」と指摘し、「ひとつの選択肢として、エバシェルドを発症抑制目的で使っていただくことで、(患者に)貢献できるのではないか」と話した。また、「免疫不全で難しい生活をされている患者さんを1人も残すことなく、エバシェルドをお届けしたい」と強調した。
◎東邦大学・舘田教授 積極的な治療を受けている血液がん患者から使用される
東邦大学医学部微生物・感染症学講座の舘田一博教授は、東邦大学医療センター大森病院でエバシェルドの発症抑制目的での使用に関して検討していることを紹介。患者数の多さから、積極的な治療を受けている血液がん患者から同剤は使用されると見通した。舘田教授は「白血病や悪性リンパ腫で強い抗がん剤療法を受けている患者は、免疫不全でワクチンを打っても抗体価が上がらない。このような患者をどういうふうに守るのかということが日本で今、求められている。エバシェルドの大事な効果になると思っている」と述べた。
エバシェルドの投与タイミングに関しては、▽筋注で有効性が6カ月持続する▽患者の免疫不全の状態及び重症化リスク▽社会の感染状況――に加え、特に人の移動が活発になる年末年始の感染リスク・重症化リスクが高まる時期や、インフルエンザとの同時流行リスクも考慮しながら、主治医と投与タイミングを相談してほしいと呼びかけた。