ハプスブルク帝国の鉄道よもやま話
公開日時 2021/02/01 00:00
日墺文化協会会員(株)ABC古川 隆第一次世界大戦の敗戦とともに長く続いたハプスブルク帝国は崩壊することになります。広大な領土を持っていたハプスブルク帝国では19世紀後半から20世紀はじめにかけて領土全域に広大な鉄道網を構築していました。今回はそんな鉄道のお話です。ハプスブルク帝国の実質的な最後の皇帝フランツ・ヨーゼフの末期の頃には鉄道は貴族、平民を問わず重要な交通手段となっていました。当時を舞台としたヨーゼフ・ロート作の『ラデツキー行進曲』の中にも鉄道に関する描写がよく出て来ます。莫大な借金を背負った息子トロッタ少尉を父親の郡長トロッタ=ジポーリエ男爵が訪ねて帝国東端辺境の地にある駅に降り立つ場面、トロッタ少尉がウィーンに住むフォン・タウスィ夫人のもとに長い時間列車に揺られて北駅...