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エーザイ・内藤CEO アデュカヌマブは「ツーサプライズ!忘れられないテーマになる」

公開日時 2019/10/31 03:53
「ディスコンティニュー(試験中止)の時もサプライズ。今回も非常に驚いた。ツーサプライズで死ぬんじゃないかという想いを2回もした。忘れられないテーマになる」―。内藤晴夫代表執行役CEOは10月30日、エーザイ本社で開催された2019年度第2四半期決算説明会でアデュカヌマブの主要評価項目達成の一報を耳にしたときの興奮をこう披露した。

認知症領域で開発中のアデュカヌマブとBAN2401の2つの化合物を軸に、認知症フランチャイズを構築する-。内藤CEOが描き続けた未来が一歩、現実に近づいた。アデュカヌマブはバイオジェン由来の製品だが、「両方ともイコールに、バイオジェン、エーザイとしては大切なキャンディデート(候補物質)だ」と内藤CEOは強調する。認知症は合併症を含めて患者背景も多様なことから、「一つの薬剤ですべてを満たすのは難しい。複数の薬剤で、フランチャイズ的な物を構築できる可能性は非常に高いのではないか」との見解を示した。アリセプトで認知症領域のパイオニアとなった同社だが、2剤を軸に次世代の認知症治療を牽引する構えだ。

◎認知症市場は年率4%の伸びを見込む巨大市場

エーザイと米・バイオジェンは10月22日、アデュカヌマブについて、早期アルツハイマー病の症状抑制で、承認取得を目指すと発表した(関連記事)。株式市場の反応は早く、開発を進めてきたエーザイとバイオジェンの株価は日米それぞれ急伸。エーザイ株は一時、ストップ高となった。

高齢化が進展するなかで、認知症患者は全世界で2050年に1憶5200万人まで増加すると推計されている。日本でも2025年で730万人にまで拡大する。認知症市場は年率4%の伸びを見込む巨大市場だ。一方で、米メルクや米イーライリリー、英アストラゼネカ(AZ)など、認知症治療薬の開発には多くのグローバルメガファーマが乗り出したが、開発後期での中止が相次いでいた。同社も9月に、BACE阻害薬・エレンベセスタットの臨床第3相試験を中止していた。いずれも、アミロイドβペプチド(Aβ)の沈着(アミロイド病理)が疾患の引き金とするアミロイドβ仮説に基づいて、開発が進められており、仮説自体の真偽を問う声もあがっていた。

◎アデュカヌマブの試験結果が一石を投じた カギ握る用量設定


アデュカヌマブの試験結果は、こうした状況にも一石を投じた。内藤CEOは、「早期アルツハイマー型認知症患者を対象とするフェーズ3試験に世界で初めて成功した」と説明。「アミロイドベータ凝集体の除去は、認知機能の向上をもたらすことが大規模試験で証明された」と意義を強調した。

しかし、試験はすんなり成功に至ったわけではなかった。同社の次期主力品として期待がかかっていたアデュカヌマブだが、独立データモニタリングコミッティが無益性解析の結果、主要評価項目が達成される可能性が低いと判断。今年3月に2本の国際共同臨床第3相試験「ENGAGE」、「EMERGE」を中止した。しかし、その後、新たな症例を加えた最終解析を行ったところ、EMERGE試験は、主要評価項目に据えたClinical Dementia Rating-Sum of Boxes (CDR-SB)は高用量群(547例)でプラセボ群に比べ、23%有意に減少した(p=0.01)。これに対し、低用量群(543例)では14%だった。記憶や見当識、言語などの認知機能改善でベネフィットがみられた。一方、ENGAGE試験では主要評価項目は達成しなかったものの、10回以上10mg/kgの継続投与を受けた症例に絞ってITT解析を行ったところ、脳内アミロイドの有意な減少がみられたと説明した。

最終解析が無益性解析の結果と異なるケースは極めて珍しい。最大の要因は、プロトコル変更により、最高投与量(10mg/kg)投与をより多くの患者に投与ができるようになったことだ。臨床試験開始当初、アミロイド関連画像異常(ARIA-E;浮腫)への影響を抑える観点から低用量での試験が実施されていた。一方で治験などを通じてデータが集積されるなかで、「ARIAによる投与中止後、予定用量へ投与再開を可能にする」、「ApoE4陽性症例の最高投与量を10mg/kgに上げる」という2つのプロトコル変更を実施した。無益性解析の1748例から最終解析では3285例まで拡大。EMERGEとENGAGEの試験結果の食い違いについても、「ENGAGEにおける高用量暴露の割合は、プロトコル変更による高用量の機会が増したENGAGEより少なかった」ことが要因との見解も示した。高用量投与によるARIA-Eなどの副作用への懸念についても、「MRIでのチェックは時々行わなければならないかもしれないが、それにより、この薬剤の使用に大きな制限がかかるということは、今は考えていない」としている。

◎米国は2020年の早い段階で申請、日欧は早期申請目指す


現在フェーズ3段階にあるBAN2401についても、Aβ凝集体のなかでも神経毒性抑制が重視されるプロトフィブリルへの選択性が高いとして期待を寄せた。なお、アデュカヌマブについては、米国では2020年の早い段階での申請を行う考え。日本や欧州でも、早期申請を目指し、規制当局と協議を進めている。

◎2019年度営業利益1100億円 アリセプトピーク時を超える過去最収益視野


同社は2019年度の営業利益は、1100億円になると見通した。認知症治療薬・アリセプトのピーク時を超え、過去最収益を達成する公算が高まった。中期経営計画「EWAY2025」で掲げた目標も1年前倒しで達成することになる。

売上を牽引するのが、抗がん剤・レンビマだ。2019年度第二四半期の売上高は前年同期比207%増の505億円。なかでも、肝細胞がんの適応を取得した米国で前年同期比197%増の284億円を売上げた。9月には子宮内膜がんでの併用療法の承認を取得しており、さらなる市場浸透を見込む。2019年度の売上収益を1190億円に上方修正。さらなる適応拡大を見込むなかで、米メルク社からのマイルストンについても、「獲得する確度は非常に高くなってきている」と自信をみせた。研究開発に集中的な投資を行うことで、一気にブロックバスターへと成長させたい考えだ。

2019年度第二四半期(4~9月)の売上高は2992億6500万円。前年同期比3.5%の減収となった。メルク社からのマイルストンなどの一時金がなかったことに加え、エルメットエーザイの譲渡などが影響した。ただ、レンビマをはじめ、抗てんかん薬・フィコンパ、肥満症治療薬・BELVIQ、抗がん剤・ハラヴェンのグローバル4製品が、前年同期比53.3%増(268億円増)と急伸。「すべての数字が事業計画を満たしている」(内藤CEO)と強調した。

【連結実績 (前年同期比)  19年度通期予想(前年同期比)】 
売上高 2992億6500万円(3.5%減) 6800億円(5.8%増)
営業利益 320億1800万円(33.8%減) 1100億円(27.7%増)←修正前1030億円
親会社帰属の純利益 269億9300万円(17.3%減) 816億円(28.7%増)←修正前720億円

【グローバル製品全世界売上高 (前年同期実績) 19年度通期予想、億円】
レンビマ 505 (245) 1190←修正前1160
ハラヴェン 206 (204) 430
フィコンパ 118(92) 250
Belviq 32 (21)50
アリセプト 192  (213) 350
パリエット/アシフェックス 135(140)240

【国内主要製品売上高 (前年同期実績) 19年度通期予想、億円】
ヒュミラ 253 (239) 490
リリカ 139(138)非開示
アリセプト 74 (98) 140
メチコバール 74 (78)130
レンビマ 69 (43) 130
ルネスタ 63 (55) 130
パリエット 58 (68) 110 ※
ハラヴェン 50 (49) 100
トレアキシン 41 (37) 82
エレンタール 33(33) 65 ※
ケアラム 32 (20) 70
フィコンパ 19(14)非開示

※はEAファーマ取り扱い製品
注)リリカの売上収益は共同販促収入

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