夢を諦めなかったから、町工場でもロケットを打ち上げることができた
公開日時 2016/03/15 05:00
情熱的読書人間
榎戸 誠
【町工場からロケットを】
『空想教室――好奇心を「天職」に変える』(植松努著、サンクチュアリ出版)では、自家製ロケットを打ち上げ、宇宙事業に取り組む小さな町工場の経営者が、夢を諦めるなと全国の子供たちに語りかけている。本書は、子供に止まらず、私たち大人も励まし、勇気づけてくれる。「あんなにちっぽけな工場の人だって、ロケットを飛ばせるくらいだから、もしかしたら自分にもなにかできるんじゃないか。そんな風に感じてもらえたらいいなと思って、ぼくはロケットを作っています」。
【夢を思い描く】
著者は、先ず、夢を「思い描く」ことを勧めている。具体的には、●もう一度、「自分の夢ってなんだろう?」と考える→●「すでにできること」ではなく「まだできないこと」をはじめてみる→●はじめから人にまかせず、まずは自分で試してみる→●今の時代の「ラッキー」から、作り出せるものを考える→●なくなるお金ではなく、なくならない知識をためる――という順で進めていく。「ぼくは今、北海道の真ん中へんにある、赤平(あかびら)という町で小さな工場を経営しています。その工場でぼくはロケットを作っています。誰かに頼まれて、部品を作っているわけではありません。ロケットをまるごと作って、自分たちの手で宇宙に打ち上げているのです。人工衛星もまるごと作って打ち上げています。その人工衛星は宇宙で立派に役目を果たしました。・・・今では日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)が1年の3分の1くらい、ぼくの工場まで実験しにきてくれるようになりました。実験装置がうちの工場にしかないから、うちの工場にくるしかないんです。・・・NASAの人もきてくれるようになりました・・・ぼくの工場の従業員は20人足らずです。しかもこの中に、大学で宇宙の勉強をしてきた人は一人もいません」。
【思い込む】
次には、「思い込む」ことが必要になる。●プレッシャーを感じる役割を、すすんで引き受けてみる→●他の人がやっていないことを、自分からためしてみる→●うまくいかなかったとき、「だったらこうしたら?」を考える→●「これまで」を見ないで、「これから」のことを決める→●いたずら心を出して、余計なことをやってみる。
【思いやる】
その次は、「思いやる」ことだ。●素直さや真面目さより、「自分の考え」を優先する→●「気が合う人」よりも、「経験がある人」に相談する→●何冊も伝記を読んで、ヒーローたちを真似る→●「自分と違うタイプの人」に、自分から心を開いてみる→●定期的に「いまからやりたいこと」を考える。「大事なのは憧れです。憧れは未来をより良くするパワーです。ぼくたちは憧れ続けるべきです。届かないものに手を伸ばし続けるべきです。憧れさえあれば、ぼくたちは一生成長できるし、まだまだこれから先なんぼでも光り輝くことができます。もしも人が憧れをなくしてしまったら、どうなるでしょうか。つまり『今の自分にできること』しかやらなくなってしまったら、どうなるでしょうか。その瞬間、人の心の成長はピタッと止まり、あとは身体だけが、どんどん歳を取っていきます。・・・ジャンプし続けるんです。そうしたら5年後の自分は、今の自分からは想像もつかないくらい素敵な人になります。本当になります。だから憧れをやめないでください」。
【思い切る】
さらに、「思い切る」へ進む。●「楽そうな方」ではなく「楽しそうな方」を選ぶ→●いやなことを見つけたら、なぜいやなのかを考える→●目の前の仕事だけではなく、次の仕事も同時にはじめる→●「ちゃんとしている」ふりをせず、「自分の弱み」を見せる→●好きなことは「やめろ」と言われても続ける→●「どうせ無理」と戦う。「偉人になるための資格はありません。学校もないです。この人たちはただ、『好きなことをやめなかった』からこうなっちゃっただけの話です。好きってすごいです。好きなことは、がんばれるからです。好きなことは、覚えちゃうからです。それが人間の本当の実力です。・・・人を輝かせる魅力のもとは、『好き』しかないのです。好きなことがあると、仲間が見つかりやすいし、力を合わせやすいです。だから好きなことはやめずに、いっぱい続けた方がいいのです」。よし、私も頑張るぞ!
【思い続ける】
最後の段階は、「思い続ける」こと。●「なにになりたいか」ではなく「なにをやりたいか」を考える→●中途半端になってもいいから、好きなことにはいくつも手を出す→●否定されても、怒らず聞き流す――ようアドヴァイスしている。
池井戸潤の小説『下町ロケット』に感動した君なら、自家製ロケットにどのような工夫を凝らしたのかを語る箇所を初めとして、本書にもワクワクさせられることだろう。