CYP2C19機能喪失予測するカットオフ値 3種類の血小板凝集能検査から示唆
公開日時 2012/09/06 05:00
PCI施行後にクロピドグレル+アスピリン併用による維持療法を受ける患者において、CYP2C19の機能喪失(LOF)アレルを検出する、血小板凝集能のカットオフ値が、光線透過率血小板凝集測定と多電極凝集能測定、VerifyNow P2Y12アッセイの3種類の血小板凝集能検査結果から示唆された。8月25~29日の日程で、ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州心臓病学会(ESC)2012のポスターセッションで26日、韓国、Dong-A University HospitalのZhang Hong Zhe氏らの研究グループが報告した。
CYP2C19の遺伝子型は、クロピドグレルへの薬物動態と薬力学的な反応性に影響を与える因子であることが知られている。CYP2C19*2または*3の機能喪失(LOF)がある患者は、残存血小板反応性が増加しており、クロピドグレルを投与しているにもかかわらず、心血管イベントリスクが上昇する可能性が示唆されている。
研究グループは、薬剤溶出ステントを留置し、慢性的にクロピドグレル+アスピリンの維持療法を受けている244例を対象に、光線透過率血小板凝集測定と多電極凝集能測定、VerifyNow P2Y12アッセイの血小板凝集能検査で血小板反応性を評価するとともに、CYP2C19の遺伝子型を解析した。
平均年齢は64.1歳で、男性が74.2%を占めていた。対象患者は、不安定狭心症が47.5%、急性心筋梗塞が31.5%だった。既往歴は、心筋梗塞が51%、脳卒中が7.6%、糖尿病が35.7%、高血圧が62.3%、高脂血症が34.8%だった。
解析の結果、CYP2C19のLOFアレルを1つ保有が115例、2つ保有が28例で、LOFアレルがある患者は58.6%を占めた。脳卒中既往の割合が、LOFアレル1つ保有では6.1%、2つ保有では21.4%で、非保有者の3.0%に比べ、有意に高い結果となった(p<0.001)。一方、不安定狭心症の割合は、1つ保有の49.6%、2つ保有の21.4%に対し、非保有者では52.5%で 、非保有者で有意に高かった(p<0.001)。
CYP2C19のLOFアレル保有を予測するカットオフ値は、光線透過率血小板凝集測定が48%以上、VerifyNow P2Y12アッセイは242 PRU以上、多電極凝集能測定は37 AUC以上だった。これらのカットオフ値での感度と特異度は、それぞれ光線透過率血小板凝集測定が48.3%と82.2%、多電極凝集能測定では59.4%と66.3%、VerifyNow P2Y12アッセイは61%と68.3%、で、精度はそれぞれ62.3%、63.9%、62.3%だった。
また検査間での相関係数(r)と一致率係数(k)を調べた結果、光線透過率血小板凝集測定とVerifyNow P2Y12アッセイ、光線透過率血小板凝集測定と多電極凝集能測定との間では、適度な一致率を示す(どちらもk=0.46)とともに、高い相関を示したが(それぞれr=0.69、r=0.56)、VerifyNow P2Y12アッセイと多電極凝集能測定との間では相関および一致率がどちらも低かった(r=0.42、k=0.3)。
多変量解析によって各凝集能検査における、クロピドグレルへの高血小板反応の独立予測因子を解析した結果、光線透過率血小板凝集測定ではCYP2C19のLOFアレル保有の有無(1つ保有 vs 非保有:オッズ比(OR):3.3、p<0.001、2つ保有 vs 非保有:OR:13.0、p<0.001)だけが有意な因子であったが、VerifyNow P2Y12アッセイではLOFアレル保有の有無のほか、年齢(65歳以上、未満)と糖尿病の有無、高脂血症の有無が、多電極凝集能測定では性別と高脂血症の有無も有意な因子として浮かび上がった。
研究グループはこれらの結果から、アスピリンとクロピドグレルによる抗血小板薬二剤併用(DAPT)を継続的に受けている患者の中から、CYP2C19のLOFアレル保有者を見つけ出すための、各検査でのカットオフ値が導き出せたとしている。