【AAN特別版】ワルファリン療法 心房細動の高齢脳卒中患者において大出血の生涯リスク上昇と関連
公開日時 2012/05/08 05:00
心房細動(AF)を伴う高齢脳卒中患者において、ワルファリン療法が大出血の生涯リスク上昇と関連し、療法中に出血リスクスコアが上昇した患者は、上昇していない患者と比べて有意にイベント発生率が高くなることが、人口ベースコホート研究の結果、明らかになった。ワルファリン療法のリスク便益は、療法中断続的に見直す必要があることが示唆された。第64回米国神経学アカデミー年次学会(AAN、4月21から28日まで米ニューオリンズで開催)のポスターディスカッションセッションで24日、報告された。(ニューオリンズ発 森永知美)
重篤な出血リスクの可能性から、ワルファリンの広範な使用は限られているものの、AF治療のためワルファリンを使用する脳卒中患者での長期的出血リスクに関するデータは少ない。
シンガポール、National University of SingaporeのRaymond CS Seet氏らの研究グループは、米ミネソタ州ロチェスター群とオルムステッド群の全住人の医療ケアを網羅する医療記録リンクシステム「Rochester Epidemiology Project Medical Linkage System」を使用し、2次予防として1980年から1995年までにワルファリン療法を受けた、AFを伴う急性虚血性脳卒中症例100例を調べた。
脳卒中発症後、ワルファリン療法を開始する前に実施した2つの出血リスクスコア(HAS-BLEDとHEMORR2 HAGES)により、被験者をリスク別に階層化。これらのスコアは1年後と5年後に再評価されfていた。
被験者の平均年齢は79.3歳。68%が女性で、ワルファリン療法の期間中央値は2.4年、脳卒中発生から死亡までの期間中央値は3.7年だった。
大出血イベントはワルファリン療法開始から19ヶ月間(中央値)で41例に発生。1年以内に16イベント、1~5年で25イベント、5年以上で14イベント発生していた。内訳は頭蓋内出血が9イベント、消化管出血が22イベント、 肉眼的血尿4イベント、 大腿部血腫4イベント、後腹膜出血1イベント、肺出血1イベントで、7例がこれらの出血イベント発生から1週間以内に死亡していた。ワルファリン療法開始前に出血歴のある患者では、出血歴のない患者に比べて大出血を発生させるリスクが有意に高かった(15% vs 3%, p=0.04)。
また出血リスクスコアの再評価の結果、療法中にリスクスコアが上昇していた症例で大出血イベントが有意に高いこともわかった。HAS-BLEDの1年後の再評価で、スコアが上昇しなかった症例で大出血イベントが発生した割合は34%だったのに対し、スコアが上昇した症例では64%にのぼり有意差を認めた(p=0.04)。5年後の再評価でスコアが上昇しなかった症例での発生率は29%に対し、上昇した症例では75%となり、有意に高かった(p=0.02)。
HEMORR2 HAGESでは1年後の再評価では有意差はなかったものの、5年後の再評価でスコアが上昇した症例では71%がイベントを発生させ、スコアが変化しなかった症例の10%を有意に上回った(p<0.001)。
これらの結果から研究グループは、AFの高齢脳卒中患者において、ワルファリン療法が大出血イベントの生涯リスク上昇と関連しているとし、療法のリスク便益は療法中に断続的に確認していく必要があると結論した。