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ARISTOTLEサブ解析 アピキサバン腎機能低下の影響受けずに有効性・安全性示す

公開日時 2012/09/06 07:00

 第Ⅹa因子阻害薬・アピキサバンは、腎機能低下の影響を受けずに、心房細動患者の脳卒中予防効果を示し、出血も増加させないことが分かった。出血リスクは、むしろ腎機能低下例でアピキサバン群のベネフィットが大きい可能性も示唆された。日本を含む39カ国で実施された「ARISTOTLE(Apixaban for Reduction in Stroke and Other ThromboLic Events in atrial fibrillation)」のサブグループ解析から分かった。8月29日に開催されたセッション「Clinical trial&registry update:update on atrial fibrillation and valves」で、ドイツ・J.W.Goethe UniversityのStefan H.Hohnloser氏が報告した。(望月英梨)


腎機能低下、心房細動は、ともに患者に高齢者が多く、腎機能低下を伴う心房細動患者は多く存在することが指摘されている。


今回報告された解析は、腎機能値による、ワルファリン(target INR 2-3)と比較した際の、アピキサバン(5mg1日2回)の有効性・安全性を検討する目的で実施された。


対象は、①75歳以上②脳卒中、一過性脳虚血性発作(TIA)、全身性塞栓症(SE)の既往③心不全または左室駆出率(LVEF)≦40%④糖尿病⑤高血圧――のうち、少なくとも1つ以上満たす心房細動患者。このうち、血清クレアチニン値>2.5mg/dLまたはクレアチニンクリアランス<25ml/minの患者を除外した。腎機能は、Cockgroft Gault式、Chronic Kidney Disease Epidemiology Cooperation(CKD-EPI)式、シスタチンCの3つの方法から、推算糸球体濾過量(eGFR)を推定。eGFR>80ml/min、50~80ml/min、≦50ml/minの3カテゴリーに分け、治療成績を比較した。主要有効性評価項目は、脳卒中+全身性塞栓症。主要安全性評価項目は、ISTH基準に基づく大出血。


すでに報告された本解析の結果から、アピキサバン投与により、ワルファリンに比べ、主要評価項目の脳卒中+全身性塞栓症を21%抑制したほか、ISTH基準における出血を31%抑制したことが分かっている。


Cockgroft Gault式に基づき腎機能を評価すると、eGFR>80ml/minが7518例(41%)、50~80ml/minが7587例(42%)、≦50ml/minが3017例(17%)だった。腎機能低値になるにつれ、高齢(平均年齢:>80ml/min:62.9歳、50~80ml/min:71.8歳、≦50ml/min:77.6歳)、女性の比率が有意に高かった(>80ml/min:25.8%(1938例)、50~80ml/min:37.4%(2837例)、≦50ml/min:53.3%(1609例)、いずれもp<0.0001)。平均CHADS2スコアは、>80ml/minで1.9、50~80ml/minで2.2、≦50ml/minでは2.6で、腎機能低下例で有意に高い値となった(p<0.0001)。


そのほか、発作性心房細動は、>80ml/minで16.4%(1235例)、50~80ml/minで15.1%(1142例)、≦50ml/minで13.1%(396例)だった。アピキサバン低用量(2.5mg1日2回投与)を選択したのは、>80ml/minで1例(0.0%)、50~80ml/minで96例(1.3%)、≦50ml/minで733例(24.3%)だった。


◎大出血  腎機能低下につれアピキサバンのベネフィット増す可能性


その結果、主要評価項目の発生率は、eGFR>80ml/minでは、ワルファリン群の1.12%/年(79例)に対し、アピキサバン群で0.99%/年(70例)だった(ハザード比(HR):0.88(95%CI:0.64-1.22))。50~80ml/minでは、ワルファリン群の1.69%/年(116例)に対し、アピキサバン群で1.24%/年(87例)(HR:0.74(0.56-0.97))。≦50ml/min群では、ワルファリン群の2.67%/年(69例)に対し、アピキサバン群は2.11%/年(54例)だった(HR:0.79、(0.55-1.14))。腎機能低下につれ、イベント発生率は両群ともに増加する傾向がみられたが、いずれの群でもアピキサバン群で良好な結果となり、腎機能値による影響はみられなかった(p=0.705)。これは、CKD-EPI、シスタチンCから推定したeGFR値を用いた際も同様の傾向を示した(腎機能値との交絡p=0.406、0.098)。


死亡率についてもアピキサバン群で良好な発生抑制効果を示し、腎機能値によらず、一貫したデータを示した(Cockgroft Gault:p=0.627、CKD-EPI:p=0.319、シスタチンC:p=0.706)。


一方、大出血については、Cockgroft Gault式に基づいたeGFR>80ml/min群では、ワルファリン群の1.84%/年(119例)に対し、アピキサバン群1.46%/年(96例)(HR:0.80(0.61-1.04))、50~80ml/min群では、ワルファリン群の3.21%/年(199例)に対し、アピキサバン群で2.45%/年(157例)で(HR:0.77(0.62-0.94))、いずれもアピキサバン群で良好な結果となった。特に、eGFR≦50ml/minでは、アピキサバン投与による効果が大きく、ワルファリン群の6.44%/年(142例)に対し、アピキサバン群で3.21%/年(73例)だった(HR:0.50(0.38-0.66))。


腎機能値の低下につれ、出血イベントの発生率は増加傾向を示したが、ワルファリンに比べ、アピキサバン群で良好な成績を示す傾向がみられた。Cockgroft Gault式、CKD-EPI式に基づいたeGFRでは有意差がみられたが(p=0.030、0.004)、シスタチンCに基づいたeGFRでは有意差はみられなかった(p=0.775)。1年後のイベント発生率について、腎機能値と治療薬の影響を検討すると、Cockgroft Gault、CKD-EPIではいずれも有意にアピキサバン群で低い発生率となったが(p=0.005、0.003)、シスタチンCでは有意差はみられなかった(p=0.54)。


Hohnloser氏は、腎機能低下例では正常例に比べ、イベント発生率が高いことを指摘。その上で、「アピキサバンは、腎機能や腎機能測定方法によらず、ワルファリンを上回る脳卒中/全身性塞栓症、死亡率、出血の発生抑制効果を示した」と述べた。出血イベントの発生抑制効果については、腎機能低下例でよりアピキサバン投与によるベネフィットが大きかった可能性を示唆し「腎機能低下を伴う心房細動患者の脳卒中予防において、より有効で安全な治療を望むアンメット・ニーズに特別に応える薬剤であることを示唆している」と述べた。


◎Fox氏「中等度の腎機能低下例において、一貫した有効性を示した」Keith A A Fox氏


Discussantとして登壇したEdiburgh Centre for Cardiovascular ScienceのKeith A A Fox氏は、腎機能低下は、急性冠症候群(ACS)患者に多くみられ、脳卒中発生リスクと出血リスクの両方と関連していると、病態の重要性を強調した。


その上で、同試験の本解析の結果とCockgroft Gault式に基づいたeGFRとの関連性については、脳卒中+全身性塞栓症の発生については有意差がみられない(p=0.57)一方で、大出血については有意差がみられた(p=0.005)ことを紹介。「中等度の腎機能低下例において、一貫した有効性を示した」との見解を示した。


一方で、安全性については、減量することで、出血リスクが低下するとした上で、減量の影響がある可能性も示唆した。
 

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