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真菌感染症を併発した小児血液疾患患者 L-AMBの早期投与で感染症をコントロール

公開日時 2011/02/02 03:00

原疾患治療が困難な症例でもL-AMBで化学療法、造血幹細胞移植が可能に

第52回日本小児血液学会総会

 

12月19日開催の第52回日本小児血液学会総会(大阪国際会議場)で、奈良県立医科大学付属病院小児科の樋口万緑氏は、真菌感染症が併発または疑われた小児造血器腫瘍患者に対し、アムホテリシンB脂質製剤(製品名:アムビゾーム:L-AMB)の早期投与により、化学療法や造血幹細胞移植が予定通り実施でき、その際のL-AMBによる腎機能障害などの副作用は対応可能な範囲だったとL-AMBの有用性を報告した。


◎腎臓への影響少なく、Kもコントロール可能


小児の造血器腫瘍の治療は骨髄抑制が長期化し、抗真菌薬を予防投与しても深在性真菌症を発症することがある。この重篤な感染症が発症すると原疾患の治療自体を困難にし、患者を死に至らしめる場合もある。深在性真菌症の治療薬の1つであるアムホテリシンB製剤は、腎機能への影響や点滴中の発熱や嘔気・嘔吐などが懸念されることから、薬剤を多数併用する化学療法や造血幹細胞移植例に対しては一般的に「使いにくい」というイメージがある。樋口氏はこれらの副作用が大幅に改善されたアムホテリシンB脂質製剤「L-AMB」の有用性に着目し、血液疾患治療中に真菌感染症を発症または疑った症例に同剤を使用した患者5例の結果を報告した。


樋口氏が特に注目すべき症例として提示したのが、同種骨髄移植後に真菌感染症を発症した12歳女児の再発急性リンパ性白血病症例。真菌感染以外にも消化管出血や抗アンモニア血症、膵炎など厳しい合併症に加えてグレード3の移植片対宿主病(GVHD)が発現し、免疫抑制剤やステロイド製剤を大量に投与していた。移植後、ボリコナゾールを予防的に投与していたが、真菌感染の再燃を疑い(発熱、β-Dグルカン上昇)L-AMBに変更した。


結果は、真菌感染症を押さえ込み、発症することなく2度目の造血幹細胞移植を実施できた。この間、危惧していたクレアチニン値(Cr)の上昇はほとんど認めず、一時的に低K血症を認めたものの、「血清カリウム(K)値が3.0 mEq/Lを下回ると予想された時から随時補充することでコントロールが可能」とした。また、造血幹細胞移植で繁用されるタクロリムスやシクロスポリンをはじめとするCYP代謝の薬剤を複数併用しても薬剤間相互作用の問題は生じなかった。


◎厳重な感染管理が原疾患治療のカギ


図
他の4例には、同じく真菌症を抱えながら骨髄移植を施行できた症例や、強力な化学療法中に発症した真菌症をコントロールしながら治療を完遂した症例、移植後の真菌症発症で状態が悪化しながらも救命できた症例を報告。L-AMBの副作用は、各症例とも低K血症や嘔気などが用量依存的に発現したが重篤なケースはなく、L-AMBの用量設定と早期からの適切なK補充によって、いずれも対処可能だった。5例のうち最終的に原疾患で2例死亡したが、いずれも真菌症治療は有効だった。L-AMBの腎機能への影響は、Cr施設基準値上限の0.7を超えることなく、原疾患治療に専念することができた(図参照)。

 

 樋口氏奈良県立医科大学付属病院 小児科助教
樋口万緑氏に聞く


真菌感染を経験したことのある患者への造血器腫瘍の治療は、
生命にかかわる事態を想定することも少なくありません。今回示した症例は、L-AMBを使用したことで良好に患者の状態をコントロールすることができました。かつては造血幹細胞移植治療にまでたどりつけなかった症例を、L-AMBを早期に使用することにより救命することができると考えています。


小児造血器腫瘍の治療は、感染管理が非常に重要です。L-AMBはほとんど全ての真菌に殺菌的に作用するため血液疾患患者には必要な薬剤と考えています。少しでも真菌感染が疑われた場合はL-AMBの早期投与が重要で、場合によっては予防投与としても有用と考えています。L-AMBをより安全に使用するポイントは、予想される副作用への早期対応、たとえば今回示したようなK製剤の早期補充が重要と考えます。

 

 

 

 

 

 

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