【日本高血圧学会リポート】レニン阻害薬 糖尿病腎症合併など腎機能低下症例での臨床応用に優れる
公開日時 2010/10/20 06:00
日本高血圧学会3日目の高血圧Up-to-Date「レニン阻害薬の位置づけは」のセッションでは日本で発売から約1年が経過した直接的レニン阻害薬の位置づけが取り上げられた。同セッションでは各演者からその降圧効果もさることながら、同薬がもつ腎保護効果について話題が集中し、糖尿病腎症合併など腎機能低下がある症例での臨床応用に優れているとの見解で一致が見られた。
日本大学医学部総合健診センターの久代登志男教授は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)あるいはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)を投与されている蛋白尿または血圧高値を伴う2型糖尿病患者に対するレニン阻害薬アリスキレン隔日投与2カ月後の変化として、血圧値のみならず尿中アルブミン/クレアチニン比の下降させる一方で、eGFRは上昇するとのデータを紹介。既存薬よりも優れた腎保護効果がある可能性についての期待を示した。
また、大阪大学医学部附属病院 老年・高血圧内科の大石充氏は、レニン阻害薬とACE阻害薬の違いを表わすものとして、ARBとカルシウム拮抗薬(CCB)の併用で治療中の高血圧合併糖尿病性腎症(II期)の患者に対してCCBをアリスキレンとACE阻害薬のエナラプリルに切り替えて比較検討したRAND studyの結果を明らかにし、尿中アルブミン排泄抑制効果に関して、エナラプリル投与群と比べ、アリスキレン投与群では有意差をもって高いアルブミン抑制効果があったとした。
一方、愛媛大学医学部病態情報内科学の大蔵隆文氏は、海外のデータからレニン阻害薬アリスキレンとARBのイルベサルタンの併用によりそれぞれの単独投与よりも降圧効果が増加するとともに、同じく尿中アルブミン排泄率(UAER)の変化では、アリスキレンとARBの併用ではそれぞれの単独投与よりもUAERを有意差をもって減少させることを紹介し、「レニン阻害薬はARBと異なる腎保護効果を有するか、さらなる組織および循環レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の抑制効果が考えられる」との見解を表明した。