BARI-2D試験 ロシグリタゾン投与で心血管イベント増加せず
公開日時 2010/07/01 04:00
チアゾリジン系薬(TZD)のロシグリタゾンの投与による総死亡や心血管イベントの増加はみられないことが、「BARI-2D」試験の結果から明らかになった。同剤は、これまでに心血管死や心筋梗塞のリスク上昇が懸念されており、FDAから心血管イベントへの影響を検討することを求められていた。Washinghton University in St.LouisのRichard G.Bach氏が6月29日、第70回米国糖尿病学会議(ADA)の「Late-Breaking Clinical Studies」で報告した。(6月29日 米国・オーランド発 望月 英梨)
同剤と心血管イベントとのリスクが指摘され始めたのは、2007年のこと。同剤を投与した42試験を対象にしたメタ解析で、ロシグリタゾンと心筋梗塞、心血管死との関連性が指摘された。これを皮きりに、「RECORD」試験では、ロシグリタゾンの投与により、心血管死や総死亡の増加はみられなかったものの、心筋梗塞の増加傾向があることなども報告されており、さらなる検討が求められていた。
今回発表されたのは、2型糖尿病と冠動脈疾患を合併した患者を対象に行われた「BARI-2D」のpost-hoc(後付け)解析。対象は、▽ロシグリタゾン投与群992人▽チアゾリジン系薬非投与群(以下、TZD非投与群)1199人――の2群に分け、心血管イベントの発現頻度を比較した。平均追跡期間は4.5年間。
その結果、総死亡は、ロシグリタゾン投与群で1.88イベント/100人・年(57例/3025例)だったのに対し、TZD非投与群では2.56イベント/100人・年(183例/7146例)で、有意差はみられなかった(P値=0.08)。そのほか、心筋梗塞や心不全についても有意差はみられなかった。
これに対し、脳卒中は、ロシグリタゾン投与群0.28イベント/100人・年(8例/2883例)で、TZD非投与群の0.77イベント/100人・年(50例/6494例)で、有意にロシグリタゾンで少ない結果となった(P値=0.008)。そのほか、複合エンドポイント(死亡・心筋梗塞・脳卒中)もロシグリタゾンで有意に少ない結果となった(P値=0.002)。
また、インスリンやACE阻害薬、メトホルミンなどと併用した際の心血管イベントへの影響も検討したが、相互作用によるイベントリスクの上昇などはみられなかった。
一方で、ロシグリタゾンの投与により、骨折リスクが有意に1.62倍に上昇することも分かった(P値=0.03)。
これらの結果から、Bach氏は「冠動脈疾患を合併した2型糖尿病患者へのロシグリタゾンの投与は、心筋梗塞や死亡を含む心血管イベントを増加させない」と結論づけた。
同剤の心血管イベントについての影響は、FDAが7月13~14日に開くAdvisory Meetingsで検討される予定。