VALISH試験 収縮期140mmHg未満でイベント発症率に有意差みられず
公開日時 2010/06/09 04:00
高齢の日本人収縮期高血圧患者に、収縮期血圧値140mmHg未満を目指した厳格な降圧を行っても、収縮期血圧値140~150mmHgを目指した緩徐な降圧と比べ、心血管イベントの発症率に有意差がみられないことが分かった。一方で、有害事象の発生率も両群間で有意差はみられず、厳格な降圧の安全性も示される結果となった。大規模臨床試験「VALISH」試験の結果から明らかになった。
試験は、日本人の高齢者でも、収縮期血圧値140mmHg未満に降圧することで、140~150mmHg未満の緩徐な降圧に比べて、心血管イベントの発症率を抑制できるか検証することを目的に実施された。
対象は、70~84歳の日本人収縮期高血圧患者(収縮期血圧≧160mmHg、拡張期血圧<90mmHg)ARBのバルサルタン(商品名:ディオバン)を基本治療薬に、▽厳格降圧群(目標収縮期血圧:140mmHg)1545人▽緩徐降圧群(目標血圧:140~150mmHg)1534人――の2群に分け、治療効果を比較した。主要評価項目は、複合心血管イベント(突然死、致死性・非致死性脳卒中、致死性・非致死性心筋梗塞、心不全死、その他の心血管死、心血管疾患による予定外の入院、腎不全)の発症率。試験は、全国461施設で実施された。平均観察期間は3.07年(中央値)。
その結果、主要評価項目の発症率は、厳格降圧群で10.6/1000人・年、緩徐降圧群で12.0/1000人・年で、両群間に有意差はみられなかった(ハザード比:0.89[95%CI:0.60~1.34]、P値=0.38)。
なお、厳格降圧群では、169.5mmHg/81.5mmHgから136.6mmHg/74.8mmHgまで降圧された。一方、緩徐降圧群では、169.6mmHg/81.2mmHgから142.0mmHg/76.5mmHgまで降圧された。
一方、有害事象の発生率は、厳格降圧群で18.2%、緩徐降圧群では17.9%で、有意差はみられなかった(P値=0.851)。
筆者の大阪府立急性期総合医療センター院長の荻原俊男氏らは、「厳格な降圧が緩徐な降圧に比べ、優れているか決定づける統計的パワーがなかった」とした上で、「比較的健康な70歳以上の高齢者の収縮期高血圧患者では、収縮期血圧を140mmHg未満に安全に到達させることができる」と結論づけている。
同試験の結果は、学術誌「Hypertension」のOnline版に6月7日、掲載された。