アメリカ国立衛生研究所(NIH)の心肺血液研究所グループは3月15日、アトランタで開催中の第59回米国心臓病学会で、心血管イベント発症リスクが高い2型糖尿病患者群を対象とした大規模長期臨床試験「ACCORD」の結果を発表し、同患者群では血圧降下強化療法および血清脂質に対するスタチン系製剤+フィブラート系製剤の併用療法は、いずれも心血管イベント発症リスクの低下に寄与しないとの結論を明らかにした。
今回の結果について同研究所のSusan B.Shurin氏は「効果が限定的、かつ潜在的にはリスクを増加しかねない強化療法を不必要に行わないという重要な教訓を与えている」とのコメントしている。
1万人以上を登録して平均5年間の追跡を行ったACCORD Blood Pressure試験では、うち4733人を対象に従来の収縮期血圧140mmHg以下を目標とする通常治療群と正常血圧である120mmHg以下を目標とする強化療法治療群で心血管イベントを比較。発生したイベントは強化療法群208、通常治療群237件で両群間に有意差は認めなかった。
心血管イベントのうち心発作に関しては強化療法群で36件と通常治療群62件に比べ約40%発症件数が低かったが、強化療法群では著しい血圧低下や血清カルシウム高値などの合併症も多いと警告している。
◎HDL-C低値+TG高値のアテローム性脂質異常の患者群では有効との見解も
一方、ACCORD Lipid試験は5518人を対象にシンバスタチン単剤群とシンバスタチン+フェノフィブラート併用群で心血管イベント発症頻度を比較。併用治療の安全性には問題ないとしながらも、イベント発症頻度は単剤群と比べ低下しないとの結論を下した。ただ、登録患者の17%に認められたHDLコレステロール低値+トリグリセライト高値のアテローム性脂質異常の患者群では、心血管イベント発生頻度が低いことから、こうした背景を持つ患者群では併用治療が有効かもしれないとしている。