虚血性心筋症(ICM)患者では、非虚血性心筋症(NICM)患者と比べ、CRT(心臓再同期療法)の効果が低く、長期予後も悪いことが分かった。小倉記念病院循環器科の安藤献児氏が3月5日のLate-Breaking Clinical Trialsで、「CUBIC」試験の結果を報告する中で明らかにした。
試験は、虚血性心筋症患者と非虚血性心筋症患者で、CRT(心臓再同期療法)の有効性と長期予後を比較することを目的に実施。▽前向き研究(2年間)183症例▽後ろ向き研究(4年間)694症例――の2試験に分かれ、今回は後ろ向きに解析した結果が報告された。評価項目は、CRTの有効性では、6カ月後の心エコー検査、心不全の程度を定めた「NYHA心機能分類」、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)、QOL。長期予後にでは、18カ月間の心臓死、非心臓死、心不全による入院、心室性不整脈を据えた。
解析対象となった651症例のうち、虚血性心筋症患者は207例(32%)、非虚血性心筋症患者は444例(68%)。虚血性心筋症患者では、非虚血性心筋症患者に比べ、高齢者、男性、アテローム性動脈硬化性を合併する割合が多い。一方、非虚血性心筋症患者では、心房細動の発現やペースメーカーの割合、心電図でQRS波の間隔が広い症例が多い。
CRT開始から6カ月後の左室駆出率(LVEF)の変化量をみると、両群ともに有意に改善した。ベースライン時と比べ、非虚血性心筋症患者では7.3%、虚血性心筋症患者では4.8%で、虚血性心筋症患者で少ない結果となった(P値=0.02)。なお、NYHA分類やBNPについては両群間に有意差はみられなかった。
一方、長期予後については、あらゆる原因による死亡が、虚血性心筋症患者で52例(25%)、非虚血性心筋症患者で80例(18%)。心不全による入院は、虚血性心筋症患者では64例(31%)、非虚血性心筋症患者では100例(23%)で、すべての項目で虚血性心筋症患者で有意に不良な結果となっている。