ストロングスタチンであるアトルバスタチン(リピトール)、ロスバスタチン(クレストール)、ピタバスタチン(リバロ)の3剤を16週間投与したところ、安全性・有効性に有意差がないことが分かった。これまでの臨床試験や使用成績調査から、副作用の発現率には、0.6%から35.6%と幅があることが報告されていたが、これを覆す結果となった。3月5日のLate Breaking Clinical Trialsで福岡大心臓・血管内科学の朔啓二郎氏が「PATROL」試験の結果を報告する中で明らかにした。
PATROL試験は、3剤を用いて16週間治療した際の安全性と有効性を検討したもの。治療目標は、「動脈硬化性疾患診療ガイドライン2002」で設定されたLDL-コレステロール(LDL-C)の管理目標値(LDL-C以外の主要冠危険因子=0個<160mg/dL、1個、2個<140mg/dL、3個以上<120mg/dL、冠動脈疾患がある場合<100)とした。
▽アトルバスタチン10mg1日1回投与群▽ロスバスタチン2.5mg投与群1日1回投与群▽ピタバスタチン2mg1日1回投与群――の3群にランダムに割り付けた。なお、投与開始8週以降に、管理目標値に到達していない症例は、用量を倍増して投与する。主要評価項目は、▽投薬後16週(4カ月)間の副作用の発現率▽LDL-Cの治療前後の低下率――。試験期間は、2007年2月1日~09年4月末までで、九州地区の開業医を中心とした51施設で実施された。解析対象は、302例。
その結果、主要評価項目の安全性については、1つ以上の有害事象が発現した症例が、アトルバスタチン群(99例)で51例(51.5%)、ロスバスタチン群(100例)で46例(46.0%)、ピタバスタチン群(99例)で52例(52.5%)で、3群間に有意差は見られなかった。
薬剤に関連する有害事象は、アトルバスタチン群で18例(18.2%)、ロスバスタチン群で12例(12.0%)、ピタバスタチン群では17例(17.2%)で、3群間に有意差はみられなかった。なお、アトルバスタチン群では、重篤な有害事象が3例報告されたが、薬剤との関連性はないと判断されている。
一方、有効性について、LDL-Cの低下率をみると、いずれの群も投与開始1カ月後から有意に減少し、その後も継続したLDL-C低下作用を示している。管理目標値に到達したのは、アトルバスタチン群(90例)で94%、ロスバスタチン群(85例)で89%、ピタバスタチン群(87例)で94%。なお、管理目標に到達できず、増量した症例は、アトルバスタチン群で4例(4.0%)、ロスバスタチン群で6例(6.0%)、ピタバスタチン群で4例(4.0%)にとどまり、設定用量が適切であることも確認された。そのほか、LDL-Cの質的変化についても、3群間で差はみられなかった。
また、同試験ではこれまで有効性・安全性が直接比較されていなかったピタバスタチンとロスバスタチンについても検討。LDL-Cの低下率を比較した結果、ピタバスタチンのロスバスタチンに対する非劣性も証明された(中央値-0.4(95%CI:-3.6~2.9))。
◎朔氏「患者背景・合併症考慮した薬剤選択を」
一方で、同試験の副次評価項目とされた臨床検査所見から、3剤の安全性・有効性における特性も浮き彫りとなった。安全性については、いずれも正常範囲内ではあるものの、アトルバスタチンで、肝機能検査値のGPT、HbA1c、CK(クレアチニンキナーゼ)の有意な上昇、ロスバスタチンではHbA1Cの有意な上昇がみられた。なお、ピタバスタチンではこれらの作用は報告されていない。
一方で、アトルバスタチンやロスバスタチンは、尿酸値やCRPを有意に低下させた。ロスバスタチンでは、これに加え、3剤の中で唯一HDL-C値も有意に上昇している。ピタバスタチンでも、CRPの有意な低下が見られた。
朔氏はこれらの結果から、3種のスタチン間で「安全性及び有効性に差はなかった」とした上で、「患者背景・合併症を考慮し、医師の判断によって自由に選択できる」と結論付けている。