ファーマ・インサイト 使えない監督?
公開日時 2009/12/03 04:00
前回、フィールド・コーチングというテーマについて書きました。今回は同行のコツについてより具体的に見ていきたいと思います。まずは弊社のコーチングモデル「KANTOKU」の定義をご覧ください。
K 契約 MRとの事前確認
A アサインメント 同行目的の明確化
N 入室前 面会前のコーチング
T 途中 面会中の注意事項
O 終り 面会直後のPOWER コーチング
K 気合 面会直後のモチベーション
U ユーズ 後日のフォローアップ
まずは最初の「K、A」の部分を取り上げます。同行日程や時間設定の必要性は言うまでもないですが、その前に、まず前回の同行のレビューからスタートしましょう。前回の同行に効果があったのか無かったのか、その後MRの活動はどう変わったか、などの反省事項が今回の同行の背景です。お互い共通認識をもっているかを確認し、改めて「契約」(=約束事)を取り決めることが不可欠ですが、意外にもこの事前の話し合いが十分行われていない同行が多いように思います。
事前打ち合わせの中で、アサインメント(今回の同行目的)をはっきりしましょう。「目的は人材教育」という答えでは大まかすぎます。具体的にどの点に注目するかがポイントです。
正直なところ、上司や先輩の営業スタイルについて100パーセント納得しているMRは稀だと思います。「この人から学ぶことがあるのだろうか?どちらかというと来てほしくないな」という雰囲気の場合もあるし、逆に「こんなMRとの同行はいやだ」と上司が思うケースもあります。
余談ですが、私のバックグラウンドは体育会系です。子供のころに始めたバスケットを、米国では大学まで、またヨーロッパで一年間大学院に通っていたときは実業団でもプレーしていました。私のバスケットボール選手としてのキャリアを振り返ってみると、中学・高校のチーム、夏のスポーツ・キャンプ、実業団での活動を含めて、20人近くの監督の指導の下でプレーしたのではないかと思います。それらの監督の中で、私の力を本当に上手く全体的に引き出してくれたと思えるのは3人位でしょうか。
しかし、付き合いの長さはそれぞれですが他の17人全員が、「何らかの形で私が使える武器(マインドセット、技術、言葉など)」を教えてくれたこともまた事実です。つい感情的になって「すべてはこの3人から学んだ。他の17人から学んだことはひとつもない」と言ったこともありますが、冷静に考えればそうではないのです。どんなスポーツも、監督だけの力、選手だけの力で勝てるわけではありません。
「営業選手」であるMRも積極的に自分の「監督」である所長、支店長、チームリーダーなどの言葉に耳を傾け、指導やアドバイスを受ける姿勢が必要です。お互いに強みと弱みがあるという前提の下で、目的を話し合い、課題を絞ることが大切です。
課題を明確にするために、訪問する医師のタイプ、上手く接触している施設とそうでない施設、特定の問題点を抱えているところとそうでないところなどについて、最低でも同行の2週間前には一度話し合いをしましょう。 そして、そのための準備が必要であれば、きちんとしたアサインメント(宿題)を設定します。
次回は同行当日のヒントについて書きたいと思います。
ジェフリー・シュナック(Jeffrey B. Schnack) 1967 年米国生まれ。 米国とヨーロッパの大学院で国際政治経済学修士およびMBAを取得。1990年来日。外資系コンサルティング会社にて欧米企業のアジア戦略プロジェクトを 実行。その後JR東日本初の海外子会社代表などを務める。スリーロック株式会社は2004年より、製薬企業を対象に営業・マーケティング分野のコンサル ティング及び能力開発プログラムを実施している。
スリーロックHP http://www.3rockconsulting.com 本人ブログ http://blog.3rockconsulting.com/