トラスツズマブに抵抗性を示しHER2が過剰発現している転移性乳がん患者に対し、分子標的薬エベロリムスをパクリタキセルとトラスツズマブと併用して用量設定を検討したフェーズ1試験の結果が、9月23日にドイツ・ベルリンで開かれた第34回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)・第15回欧州癌学会(ECCO)で発表された。ポスターセッションで米国・ロサンゼルスのUCLA Department of MedicineのHurvitsS氏が報告した。(小沼紀子)
試験では07年7月から08年10月までに組み込んだ30~75歳の33人の患者を対象に解析した。エベロリムスを1日あたり5mgからスタートして最大10mgまで投与する群と、1週間に1回、30mgからスタートして50mgまたは70mgまで投与する群の2群に分けて、用量の検討が行われた。パクリタキセルは80mg/m2を1日目、8日目、15日目、28日目に投与、トラスツズマブは1週間に1回、2mg/kgが投与された。
エベロリムス5mgを投与された患者は6人(平均年齢56歳)、10mgが17人(54歳)、30mgが10人(55歳)だった。前治療でタキサンが投与されていた患者は、5mg群の全て(うち抵抗を示したのは83%)、10mg群が94%(35%)、30mg群が90%(20%)、ラパチニブは5mg群が50%(50%)、10mg群が53%(53%)、30mg群が40%(40%)、アンソラサイクリンは100%、10mg群が65%、30mg群が70%、ホルモン療法は5mg群の67%、10mg群の71%、30mg群の70%だった。
また、患者の疾患背景をみると、肺や肝臓系の疾患を併発した割合は、5mg群が50%(肺疾患が33%、肝臓疾患が33%)、10mが群で94%(41%、53%)、30mg群が70%(50%、30%)だった。
◎効果の面では5mg群で優れたデータ
試験結果をみると、治療持続期間の中央値は5mg群が35週、10mgが24週、30mgが33週で5mg群が最も長かった。効果の面では奏効率や長期間の病態安定などで有望な結果が得られており、完全奏効(CR)は5mg群が17%、10mg群が6%、30mg群が0%、部分奏効(PR)は67%、18%、30%、病勢安定(SD)は0%、65%、50%。一方、PD(悪化)は0%、6%、10%だった。ORR(CR+PR)は83%、23%、30%、DCR(CR+PR+SD)は83%、88%、80%で5mg群が最も優れた結果が得られた。CBR(CR+PR+SDが24週以上継続した割合)は83%、47%、70%だった。33人のうち6人は試験を継続中という(5mg群が1人、10mg群は4人、30mg群は1人)。5mg群で優れた結果が得られているが、その理由として内臓疾患を併発している患者が最も少なかったことなどが影響していると分析している。一方、安全性のデータでは、最も多かったグレード3/4の症状は、血液細胞障害や口内炎、代謝系の異常だった。
◎ヘビーな前治療のあるトラスツズマブ抵抗性の患者で進行を遅らせる可能性
これらの結果から、エベロリムスをトラスツズマブとパクリタキセルに併用した治療は忍容性が高く、フェーズ2試験では有効性と安全性のデータの両面から、10mg群が推奨されると結論づけている。また、トラスツズマブやタキサンなどに抵抗性を示したヘビーな前治療歴のある患者で有望な結果を示しており、総合的にみるとエベロリムスを用いた治療がトラスツズマブ抵抗性の患者の進行を遅らせる、もしくは回復する効果的な治療になる可能性があると指摘している。